寒いですね。出だしの挨拶が思いつきません。広報の川口です。
今回はJPDU主催のJapan BP、通称冬Tに際しての寄稿文をルーキーチャンピオンのお二人から頂きました!
増部さんと森田さんの合同での寄稿文をお楽しみください(^^)
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京都大学1回生の増部と申します。先日行われたJapan bpに阪大の同じく1回の森田敢(もりかん)と組んで出て、Rookie champion を獲ることができました。特に奇を衒ったことも思いつかないので以下ベーシックに時系列順に振り返りを書いていこうと思います。
1.概要
まず今回の大会は自分にとって初めてjointで出場した大会で、以前からもりかんとは組んで出たいねと話していたので実現できてよかったです。もりかんとは大学に入ってから知り合ったのですが関西練習会や大会などディベート内外でかなり交流があり、性格や言語特性がある程度わかっているパートナーで個人的にはやりやすかったです。
組むこと自体は早くから決まっていたものの、大会準備は圧倒的に不足していました。各々が他の大会に向けて練習していたり、片道90分という大阪ー京都間の地理的条件も重なり、初めてのプレパ練が大会前日、ラウンド練はせずじまいでした。その結果、大会中は自分が結構マターを外すのでずっともりかんの介護を受けており、めちゃくちゃ修正と摺り合わせに労力を使わせてしまったので彼には頭が上がりません。(もりかんにはやりにくかったって言われた...言いたいことだけ言って理解力に乏しくてほんとすまん...)また、途中R2以降closingのロールを交代するなど急場しのぎの対応が目立ち、心から納得のいく大会には残念ながらすることができませんでした。
しかしながら終わってみれば魑魅魍魎ひしめくJBPで純ジャパ経験者+帰国未経験の1回生二人で組んで、運に負うところ大ですが予選7points,Rookie championという結果を残すことができました。パートナーには感謝しかありません。
2.振り返り
R1:CG4位
THBT states should punish media corporations for directly or indirectly spreading misinformation (i.e. hosting factually incorrect information by users/advertisers)
部屋に入るなりよながさんがいてめっちゃ緊張しました。ラウンドが始まってみると動画や大会報告等でしか存在を知らない強い人とのディベートは緊張しつつ、めちゃくちゃ上手くて感動していました。
自分たちはベタにfake newsがどう市民の選択に影響してそれが害であることを証明しようとしたのですがmedia/advocacy group/citizenの各アクターの分析と責任を論理的に上手く切り分けられず、example頼みになってしまって論が崩壊し自滅しました。GWとしても上手く直前のMOにengageできず、役割が上手く果たせていないダメダメなラウンドでした。
whipがダメそうで、コンストならできそうということでR1終わってもりかんに頼み込んでclosingのロールをスイッチしてもらいました。
R2:OO1位
THR the glorification of woman’s resilience in dealing with difficulties/ suffering
もりかんがBOPの把握とか勝ち筋とか抽象思考をほとんど担当してくれたおかげで具体的な分析を詰めるのにかなりリソースを割くことができました。きちんとLOからコンストして、DLOが伸ばしつつ考えられるclosingのextensionをダンプで殺すという基本的なことがきちんとできていたラウンドだったと思います。
R3:OG2位
As a prominent religious leader of a major religion, THW actively promote the narrative that atheists and irreligious people can still be accepted into heaven.
モーションが難しく、対立が見えなかったのでかなりプレパで困りました。motionの意味が分かっても何を言うかわからず、滅茶苦茶焦って結局 “can still be”を曲解してAthists/non-religious peopleは「入信すれば」まだ天国にいける可能性があるという現状と1ミリも変わんなそうな話をしていました。MGが話している途中、天国に行けない奴らに何してもいいってイジメが起こるのでAthistsかわいそうというまともなアーギュメントを思いつきましたが時すでにお寿司。4位だ...と思っていたら反論が来なかったかつ他の2チームがミスってたらしく2位で、他人のミスで勝つのどうなん???????とあまり喜べませんでした。
R4:CO2位
THO the idealization of the pacifist civil rights leader
暴力使わない方が支持得やすいしmovementも成功しやすいよ!というベタな話しか思い浮かばず、openingに詰められたら死だなと思いつつ細かくメカニズムを詰めて抜こうとしました。(後でcivil rights movementって抑圧されてきたんでしょ?暴力という抑圧の手段を用いるのって立場矛盾してない?って話もできるかなと思った)LOはモーションに全く関係ない話をしていて、DLOから修正してきたということもあり、ベタな話がそのまま生きました。少し話は被り気味だったのですが、もりかんがidealizeした世界だけ非暴力戦略をとることができるというexclusivityの分析を細かく詰めてくれたので、そこで差をつけられたかなと思います。ただし、自分たちの話を詰めるので精いっぱいでCGに細かくengageしきれなかったこと、単純にCGがめっちゃ綺麗にケース立ててきたことで1位にはなれませんでした。
ブレイクナイト
私たちはブレイクナイトには参加せず、KDSとWADの同期にくっついていき、ごはんをたべながら東西交流会をしました。今回はRookieが8/14ブレイクするかつ最後のラウンド開始時に5点あったので、Rookieではブレイクしたやろと心中穏やかに交流を楽しめました。
アナウンスが始まり、隣にいたさいとーりく&すぎやまがオープン3位でブレイクしててすげえすげえってビビり散らかしてました。自分たちはRookie1位(実質2位)
で最後オーソリぶっ倒せばオープン行けたんか...など実力に見合わないことを考えつつ、翌日に備えてさっさと寝ました。
Rookie Semi Finals:win
THBT Western liberal democracies should cease their efforts to universalize liberal values.
R4と同じ仕方でオープニングを抜きました。OGのセットアップが雑だったのでwestern liberal democraciesがどのようにnon-westernに介入しているかを細かく分析してかつ、自国内でdiversity尊重しろって言ってるなら外交でもdiversity尊重しろよ!ってプリンシプルっぽいことを言いました。なんとなく勝ったなという感じはしていたのですが、どこが取られたジャッジによって違いそうな試合だったので、複数人にリフレクをお願いしました。どのジャッジもクリアにwinだと言ってくれたのですが結構その理由にはバラツキがあり、RGFまでの間に考えたりしていました。
Rookie Grand Final:win
THW use the technology
Info Slide:
There is a technology that would allow for you to completely erase the existing human race, and any traces of the human species having ever existed.
二日間で一番難しいモーションでした。人類全員殺す正当性を話さないといけないためコンテクストも絞れず、govのburden滅茶苦茶重くね??????と言いながらプレパしてました。OGで時間がない中、反出生主義に則って人類の生が苦痛に満ちたものだから全員殺すべきというutilitarianな基準を提出しましたが、そもそも人類全体生きるのが苦痛って嘘っぽいし、なぜ苦痛に感じたら殺さなければいけないのかが言ってる自分もよくわからなくて負けたーと思っていました。なので優勝と言われて最初は上手く理解できませんでした。
3.反省
・大会前にディベートをしろ!!!!!!!肛門性愛の話をしている場合ではない。
・もりかんがメタを担当して自分がその枠内で具体を詰めるという役割分担が割と上手くいったように思います。しかし、プレパ段階でスタンスに関して多少の齟齬が発生してもなかなかそれを埋められず、ワーディングも少しづつ違ったりしてチームとしての統一感があまり出ていなかったのが課題でした。
・今回は立ち上がりが悲惨でした。R1は特にケースすら立っているか微妙という状況が発生してしまい、どこから見ても4位でした。ラウンドが進むにつれて連携が取れるようになり、ケースも安定してきたので、いかにR1から安定したディベートができるかというのが今後の課題です。
4.感想
大会に関しては、Rookie Championになれたもののどちらかというと結果に納得はできておらず、それはやはりもりかんとならもっといいラウンドがつくれたはずで、もっといい成績が残せたはずだという思いが強いからだと思います。(でも、とりあえずグラファイに進み続けながら優勝できていなかったもりかんが優勝できてよかったです)学年大会は折り返し地点が過ぎました。これからオープンの大会が増えてゆく中、納得のいく結果が残せるよう頑張っていきたいと思います。
クロージングセレモニーのゆいかわぐちさんのTD address を聞いて、大会の運営の仕事は見えないだけで実際すごく大変ということがとてもよく伝わってきました。どんな仕事があって、どんな人がどのように働いて大会が成立しているかを初めて知って、感謝の気持ちとともに、今まで大会に出る側としてだけ参加してきたのでこれからはコミとして大会を運営する側で参加してみたいなと思いました。また、今回宿泊場所を提供してくれた伊藤翼もtrainee tabとして大会に参加しており、二重の意味で非常にお世話になりました。本当にありがとう。
東京-地方格差や未経験者のディベート界からの流出が叫ばれる昨今ですが、2019年は自分たちの成績を含め、地方である関西が存在感を発揮できた年だと思います。そして関西1回生のディべーターの多くが、(正確に言うなら自分以外の全員が)パーラに関しては未経験者です。未経験者の多くがモチベを維持できているのは、先輩方の細やかな、そしてレベルにあったエジュケと、練習後にぐだぐだごはんを食べながら喋ったりという分け隔てのない練習外の交流が手厚いからかなと思います。特に後者によって人柄などがわかって、ディベート強い人に抱きがちな「こわそう」イメージの緩和につながりますし、チームを組む範囲も広がってディベート内の交流も活発化し、ディベートという競技を継続できるといういい影響があるのかなと勝手に思っています。
いつもお世話になっている同期、先輩方、コミの皆さんありがとうございます。これからもお世話になります。
関西は楽しい!!!!!!!
この文章は自分ともりかんの文章を擦り合わせて組み上げたものです。少々長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
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TD addressについて触れて頂き光栄です(TT)
増部さん、森田さん、読み応えのあるボリューム満点の寄稿文をありがとうございました!! 今後の活躍からも目が離せませんね(^^)
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2019年12月27日金曜日
2019年11月5日火曜日
【ご報告】JPDU版ピースコ制度(仮称)検討室設置について
こんにちは。2019年度JPDU副代表を務めております、青山学院大学3年の香川です。
このたび、掲題の『JPDU版ピースコ制度 (仮称)検討室』を副代表直轄の臨時チームとして立ち上げることを加盟大学の皆様にお知らせいたします。
1:背景
2:活動内容(予定)
3:意見箱、問い合わせ先
梅子杯後に公開された、ディベート界における格差に関するJPDUブログ記事(http://blogjpdu.blogspot.com/2019/10/umeko-cup-2019.html?m=1)は、記録が確認できる中で最もTwitter上のエンゲージメント数が多く、また最も多く読まれた記事となりました。
ディベート界の多くの方が、格差問題について関心・共感・危機感を覚えておられるからこそと思います。
皆様の関心の強さを受け、JPDUとしても足下のパーラメンタリーディベート人口の減少、およびその原因の一つと考えられる格差問題の解決に向けた取り組みを可能な限り強化していきたいと考えています。
現状既に行われているJPDUセミナーや練習会は、accessibilityの高さや一度に収容できる人数の多さなどのメリットがある反面、継続的に指導をする、人としてメンタル面でのサポートをするなど、先輩ならではの機能を十分代替できているとは言えません。
「自大学に継続的にリソースを投下してくれる上級生がいるかどうか」が強豪大学とそうでない大学の格差の構造的要因の一つだと仮定したときに、この構造をより直接的に緩和・解消する施策が有効と考えられます。
そこで、格差解消に向けた新施策第一段としてアカデミックディベートのコミュニティーで導入実績のある「ピースコ制度」についての調査・研究を行い導入是非の議論などを進めて参ります。
ピースコ制度とは、サポートが必要な大学に対し他大学の実績ある上級生を後見人として派遣する制度ですが、詳細について不明な点が多く現状では導入すべきか否かの判断ができません。
また、当該制度を持続可能なものとして円滑に運用するための要諦についても知見を深める必要があります。
このような背景から、臨時検討チームを設立する運びとなりました。
当面は以下のような活動を予定しています。
2019年中:
・アカデミックディベートのコミュニティー関係者に対するヒアリングの実施
・中堅・中小大学に対する過去のヒアリング内容の棚卸し、および追加ヒアリングの実施
・パーラコミュニティーの実状を踏まえた素案の設計
2020年第1四半期:
・2019年中の活動を踏まえたトライアルの実施
活動を進めていくにあたって、ディベート界の皆様からのご意見などを下記のフォームにて受付けます。
https://forms.gle/22rogasyCEY6SoH2A
今後、当ブログをはじめとする各種媒体で検討状況やヒアリングの議事録などを不定期に公開させていただきます。
また、各大学の皆様には調査へのご協力等をお願いすることがあるかもしれません。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
このたび、掲題の『JPDU版ピースコ制度 (仮称)検討室』を副代表直轄の臨時チームとして立ち上げることを加盟大学の皆様にお知らせいたします。
目次
2:活動内容(予定)
3:意見箱、問い合わせ先
1:背景
梅子杯後に公開された、ディベート界における格差に関するJPDUブログ記事(http://blogjpdu.blogspot.com/2019/10/umeko-cup-2019.html?m=1)は、記録が確認できる中で最もTwitter上のエンゲージメント数が多く、また最も多く読まれた記事となりました。
ディベート界の多くの方が、格差問題について関心・共感・危機感を覚えておられるからこそと思います。
皆様の関心の強さを受け、JPDUとしても足下のパーラメンタリーディベート人口の減少、およびその原因の一つと考えられる格差問題の解決に向けた取り組みを可能な限り強化していきたいと考えています。
現状既に行われているJPDUセミナーや練習会は、accessibilityの高さや一度に収容できる人数の多さなどのメリットがある反面、継続的に指導をする、人としてメンタル面でのサポートをするなど、先輩ならではの機能を十分代替できているとは言えません。
「自大学に継続的にリソースを投下してくれる上級生がいるかどうか」が強豪大学とそうでない大学の格差の構造的要因の一つだと仮定したときに、この構造をより直接的に緩和・解消する施策が有効と考えられます。
そこで、格差解消に向けた新施策第一段としてアカデミックディベートのコミュニティーで導入実績のある「ピースコ制度」についての調査・研究を行い導入是非の議論などを進めて参ります。
ピースコ制度とは、サポートが必要な大学に対し他大学の実績ある上級生を後見人として派遣する制度ですが、詳細について不明な点が多く現状では導入すべきか否かの判断ができません。
また、当該制度を持続可能なものとして円滑に運用するための要諦についても知見を深める必要があります。
このような背景から、臨時検討チームを設立する運びとなりました。
2:活動内容
当面は以下のような活動を予定しています。
2019年中:
・アカデミックディベートのコミュニティー関係者に対するヒアリングの実施
・中堅・中小大学に対する過去のヒアリング内容の棚卸し、および追加ヒアリングの実施
・パーラコミュニティーの実状を踏まえた素案の設計
2020年第1四半期:
・2019年中の活動を踏まえたトライアルの実施
3:意見箱・問い合わせ先
活動を進めていくにあたって、ディベート界の皆様からのご意見などを下記のフォームにて受付けます。
https://forms.gle/22rogasyCEY6SoH2A
今後、当ブログをはじめとする各種媒体で検討状況やヒアリングの議事録などを不定期に公開させていただきます。
また、各大学の皆様には調査へのご協力等をお願いすることがあるかもしれません。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
2019年11月2日土曜日
梅子杯に際して〜村田さんからの寄稿文〜
スタバのコップが既にクリスマス仕様になっていて、あまりの時の流れの早さにビビっています。広報の川口です。
今回は見事梅子杯チャンピオンに輝いたKDSの村田さんのブログ記事です!村田さんの、驕らず謙虚に、向上心を持ち続ける人柄が伺えるブログ記事となっており、同じ大学の上級生としても見習うべき部分がたくさんあるなぁと読みながら感じました…。それではお楽しみください!
o○゚+.。o○゚+.。o○゚+.。o○゚+.。o○+.。o○゚+.。o○+.。o○+.。o○
こんにちは。KDS1年生の村田律です。10月5・6日に東京理科大学野田キャンパス・津田塾大学小平キャンパスで行われた梅子杯について書かせていただきます。語彙無いし読みにくいし長いかもしれないですが、よろしくお願いします。あとなんかりくを崇めまくってますが、銀杏杯のブログでりくと組んだけいたもりくに感謝しまくっているのでそういうものとして気にしないでくださると幸いです。
目次
1,大会前
2,大会当日
3,まとめ
4,謝辞
1,大会前
九月の初めにトライアウトがあり、他大学を含め4人の先輩に来ていただいて一対一でファーストスピーチを見ていただくことを4回行う、という形式でした。めっちゃ緊張しながらも枠に入れました。チーム分けについては自分とけいたと陽平がファースト希望でバランスが悪かったところ、けいたが「俺、セカンドでいいですよ」と大人な対応をしてくれたのでロールで組むことにし、最終的にトライアウト1位のりくと組むことになりました。けいたに感謝。
秋Tも出場したため練習時間は秋Tが終わってからの2週間しかなかったので焦りました。しかも組んで最初の練習でボロボロだったため、急遽ロールを入れ替えてりくがファースト、自分がセカンドとなりました。けいたのイケメンムーブを台無しにしてしまって申し訳なかったです。けいたすまん。練習としては通常のラウンド練に加えてUTDSにお邪魔したり、先輩の淳さんにプレパを見てもらったりなどしました。梅子前日の練習ではけいた・陽平ペアに負けましたが、自分は大会前日に調子が良いと大会で爆死する傾向にあるので内心ノルマ達成で安心していました。
2,大会当日
(1)1日目
慣れないスーツ・遠い会場に戸惑いながらもなんとかレジ落ちは回避しました。会場に着いたらみんなスーツでかっこよかったです。そんなこんなで余計なこと考えてたら当初「会場ついたら頭働かすためにプレパしよう!」と言っていたのを完全に忘れてました。
R1 THW
make voting mandatory. (opp) : win
古典モーションだったので考えやすく、助かりました。
りくがきちんとこちら側のケースを立ててくれたので、丁寧なキャラクター分析のもとなんで相手の言う利益が起こらないのかなど反駁を徹底することを意識しました。自分的には上手くいったラウンドでした。
ちなみに相手は日吉練にも来てくれた一橋のチームで、なんかテンション上がりました。
R2 THBT
parents and teachers should encourage children to be satisfied with what they
have at that time rather than to have ambition to achieve more. (gov) : win
上手くキャラクター分けをして野心を持つことが美化されすぎることで困る人の話をしたつもりが、ジャッジの方に自分たちが守りたいものを明示すべきと言われてしまい、まだまだ分析が足りないのだなと痛感しました。また、持病のビッグワード症候群が出てしまい、上を目指せというプレッシャー!!って言った割にそれがどうやばいのかを全然言ってなくてそれも直さねばと感じました。ビッグワードモンスターです。
ちなみに相手は自分たちが大会前に行かせてもらった東大のチームで、一戦目同様謎の高揚感がありつつも、二連続で知り合い同士の潰しあいみたいになって若干テンションが下がるという複雑な心境でした。
R3 THW
prohibit the media from reporting on the mental illness of crimes. (gov) : win
りくがガンガン報道がいかに悪意に満ち溢れてるかやそれを受け取った一般市民及び精神疾患を抱える人がどうなるかを詰めてくれたので「流石だなぁ」と思いつつも相手の話を返すことに専念できました。ところがどっこいラウンド後に過度に一般化しすぎとか自分のケースが完成してなかったなどの指摘を受けてしまい確かに詰めきれてなかったなぁと後から感じました。ちゃんと自分たちのケースを冷静に見るべきでした。パートナーの説得力がありすぎるのも考えものですね(責任転嫁
R4 THW
force doctors to report suspected cases of domestic violence. (opp) : win
どんな人がDVを相談しないのかを分類したはいいもののそれぞれの理由が存在する理由及びなぜそれが尊重されるべき選択なのかが詰まっておらず若干水掛け論的な感じに…。また、報告を恐れて病院に行かなくなるというのも主張のみで水掛け論になり、さらにその結果何がやばいのかもそこまで詰まってなかったということで反省の多いラウンドでした。
ちなみに相手は早稲田でした。慶早戦、まずは一勝です。
夜は寄り道せずにまっすぐ帰りました。帰る途中でみんなとブレイク発表を見たらジャッジ含め全員ブレイクで熱かったです。ただ、一位ブレイクを狙っていたので二位ブレイクだったのがだいぶ悔しかったです。1日目を通してりくの安定感を改めて実感しました。
(2)二日目
相変わらずスーツは慣れませんでしたが、会場的に1日目よりは少し余裕がありました。会場に着いて改めて誰一人欠けずにKDSが集まってる事実にテンションが上がり、トーナメント表的に決勝をKDS AとKDS Bで占めることは叶わなくなってしまったものの、準決勝で当たろうぜと少年漫画チックなことを話しつつ、負けたら即終わりの試合を前に意識を高めてました。
OF THW
monitor ex-prisoners with GPS. (gov) win
モデルでGPSを罰の一部のように扱うとして(モデルとして正しいかはともかく)相手の過剰な罰となる的な話を弱めようと思ったのですが結局上手く使えず、利益がめっちゃあるという話のゴリ押しと申し訳程度の正当性の話で勝ちました。
QF TH,
as moderate feminist groups, would actively label and criticize radical feminists
as “Feminazis”. (gov) win
フェミニズム系のモーションは地域や思想ごとの細かいキャラクター分けが大事と教えてもらったので実践しようとするも途中でこんがらがって結局よくわからないスピーチをしてしまいました。動機などの細かい分析がなかったためか、チームとしてもなんでフェミナチとして非難することで解決するのかが謎な感じになってしまいました。
SF In
cases of interracial adoption, THW allow foster parents to force their children
to alter their racial appearance. (opp) win
…何言うの?そもそもわざわざ違う人種の子供引き取っておいて手術ってどういう状況?したとしてそんなやばい?って感じでずっと頭に?を浮かべながらプレパしてました。りくの言ってくれることにも引っかかり続け、結局何を言うのかわからないまま試合に突入。ここ最近で一番恥ずいスピーチをした一番忘れたいラウンドなので正直記憶があまりありません。有能な自己防衛機能が備わっているようです。そんな中でも覚えていたのはりくがめっちゃフォローしてくれたことと淳さんが自分のスピーチの直前に部屋に入ってきたときの絶望感くらいです。正直ラウンド終わってから結果が出るまでずっと負けたと思ってました。あまり勝ちに貢献してこなかったくせに自分のせいで負けちゃうと思うとなんか精神状態がめっちゃヤバくなってしまい、高校時代からお世話になっていて梅子二日目も見にきてくださった馬場先輩と散歩(100m強)するという謎ムーブをしつつめっちゃアドバイスもらってました。馬場先輩、ありがとうございました…! 結果が発表されてみるとなんと勝っていました。りくには感謝してもしきれないし、勝ったとわかっても申し訳ないです。また、激アツになるはずだった日吉ラウンドを(個人的に)微妙な感じにしちゃったり焦りすぎて楽しめなかったりと陽平とけいたにも申し訳なかったです。次はちゃんとしたスピーチをして貢献しようという気持ちと敗れたけいた・陽平の分も頑張ろうという気持ちを持って、もらったアドバイスを消化することに決勝まで努めていました。
GF THW
forcibly introduce a CO2 emission limit to all countries even when it hinders
economical growth. (gov) win
とりあえずプレパはりくが好調で自分たちのケースをどんどん詰めていってくれたので自分はアドバイスにもあった相手の話を根幹から切るというところを意識しながら話すことを考えていました。
別部屋でのプレパが終わって会場の大きな部屋に戻るとめっちゃ緊張が増しました。そもそも大勢の人の前でスピーチするなんて2回目だし、相手チームの早稲田の二人とりくは渋谷教育学園渋谷という高校のパーラメンタリーディベートのトップに君臨するとっても強い高校(自分は銀杏杯でここの高校生に負けました)出身なので、栃木の片田舎出身で海外経験もない自分はアウェー感が半端なかったです。焦って噛むとか言わなきゃいけないことも言えないなどがないように気をつけながら頑張りました。古典モーションだったのでまあ予想通りの話がどちらからも出て、なんやかんやあって、りくがかっこいいリプライスピーチで綺麗にディベートを締めてくれて勝ちました。りくの進化が止まりません。割と決勝は自信があったので優勝した瞬間に発狂はしませんでしたが、ブレイク一位を取られた借りを返せて、何よりこのチームで優勝できてとても嬉しかったです。そして慶早戦二勝目です。今大会に出ていた早稲田の2チームをどちらも倒しました。これで慶應の中でのKDSの地位も上がるでしょうか。土曜の必修を切って大会に出ている身としては公欠にするくらいのわがままは聞いてくれていいと思います。
3,まとめ
優勝したいというのはもちろんKDS三連覇がかかっていてプレッシャーも一入だったので、優勝できてよかったです。KDS AとBで準決勝をできたのも熱かったですね。また、いろんな大学の人と二日間という短い時間の中で試合できたことも普段あまり他大学に行かない自分には大きな刺激となりました。一方でまだまだ課題も山積みであることを実感しました。特に準決勝。英語力をつけたりリサーチをしたりとこれからも邁進していきたいです。
あと、モーションムービーが凝っていて面白かったです。
また、見栄を張らないことは大事だなぁと感じました。一年生大会だしジャッジの人もたどたどしいスピーチや拙いロジックを予想してる。一年生の中には自分より全然上手な人もたくさんいるし、大会で覚醒なんかするわけない。それを心に留めた上で本番まで万全の準備をして、本番では無理して欲張らずにやってきたことを出す。失敗したらそんな日もあります的な感じで切り替える。それを意識したら割と決勝も落ち着いたスピーチができた気がします(準決勝は失敗したけど)。自分は梅子前に今までの梅子杯のブログを見たりしてたので、もしこれから同じように一年生大会の前にこの記事を覗く一年生がいたら参考になればいいなと思います。
4,謝辞
秋Tが終わって本格的に梅子に向けて練習し始めてから大会の終わりまで様々な方にお世話になりました。KDS外ではAC陣含め梅子杯を運営してくださった方々、大会当日ジャッジをしてくださった方々、会場を貸してくださった東京理科大と津田塾大学の方、練習しに行ったら快く受け入れてくださったUTDSの方々、遠いのに日吉まで来てくださった他大学の方々、ありがとうございました。
KDSでは、練習で相手をしたりジャッジをしてくれた同期や先輩方、当日提供ジャッジとなってくれたみよさんとゆいさんとごろうさん、当日遠いのに来てくれて自分たちのラウンドを見て改善点を教えてくれた伊藤と橋本、忙しい中自分たちの疑問点に答えた資料や苦手な分野の資料を作ってくれたましゅうととしやさん、忙しい中資料の作成・レクチャー・プレパ練の指導・ジャッジなど多くのことをしてくださり、さらには二日目にも来て決勝のあとまで細かく丁寧なアドバイスをくださった淳さん(部屋に入ってきて絶望したとかいってすいません)、本当にありがとうございました。
そして最後にりく。組んでくれて本当にありがとう。準決勝をはじめとして基本りくに頼りっぱなしだったし、慎重になりすぎたり勝手に不安になってる自分を上手くほぐしてくれて助かった。りくがいたからこその優勝だと思うし、また機会があれば是非組んでほしい(その時までにはもっと上手くなります)。
いろいろ書きましたが、とりあえず普段の練習で満足せずにリサーチ・スピーチ練習をしっかりやって上を目指していきたいと思います。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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実はKDSは、三連覇かつ決勝進出は六年連続なんですね〜我が部ながらに感動です(^^)(自賛)
村田さん、素敵な記事をありがとうございました!今後の活躍にも期待です!
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実はKDSは、三連覇かつ決勝進出は六年連続なんですね〜我が部ながらに感動です(^^)(自賛)
村田さん、素敵な記事をありがとうございました!今後の活躍にも期待です!
2019年10月15日火曜日
JPDU Autumn Tournament 2019に際して~山野さんからの寄稿文~
朝夕の冷え込みが厳しく感じられる季節ですね。
みなさんお久しぶりです、広報の岡田です。
今回は秋Tで見事優勝なさった山野環太さんに記事をお願いしました。
軽妙な名文をお楽しみください。
みなさんお久しぶりです、広報の岡田です。
今回は秋Tで見事優勝なさった山野環太さんに記事をお願いしました。
軽妙な名文をお楽しみください。
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こんちは、神戸大学4回(5年目)の山野環太いいます。ブリティッシュトラッドな服が好きです。アレックスが着てるばり細い白シャツどこで売ってんの?
以下ポエム。
【まわりのひとが自分をすげー遠くまで連れてってくれるって話】
自分らしくなさすぎて笑うんですけど、秋Tで心に残ったのがまわりのひとの反応だったんですよ。いやもちろんGFで壇上立つときとか脳の血管ブチ切れそうなほど興奮したし楽しかったんすけど、その前後にたくさん響くことがありました。
さくらいさんがラグビー観戦キャンセルして2日目きたりとか。神大同期のぅぇ様が観戦にきたりとか、いつも帰っちゃうルーカスが関西の決勝見るって残ってたりとか。決勝後にQUとすげー楽しかったって言い合ったりとか、たむらとかきもとがスピーチほめてくれたりとか、まさおが優勝すげー祝ってくれたりとか。TDさんさんはじめ神大みんなが喜んでくれたりとか。他にも書ききれないくらいいろんなひとにうれしい言葉をもらいました。
え、こういうことさらっとできる?わたし多分むり。負けたら渋い顔ぶらさげて喫煙所で不味い煙草吸ってるはずです。いい結果残した友達にも「おめでとー」とかですましちゃうことが多かった気がする。ああ、いろんなひとがいろんな形で自分に関わってて、彼ら彼女らと一緒にやるから何倍もディベート楽しめてたし、だからちょっとずつ上達できたんだろな、とはじめて肌で感じた気がしました。遅え。や、理屈ではわかってんですけど、ゆーてみんな自分のやりたいことやってるわけやん?くらいにしか思ってなかった。
まわりに感化されて5年もたるたるディベートねぶりつづけてるし、ブレイクにかすりもしなかったやつがナショナルズで勝つとこまで運ばれてきてんじゃん、これブログネタじゃね…と相成ったわけです。超絶一人称視点に寄った文章書き上げて広報に送ったあとにこれ思いついて、投稿待ってもらって内容変えてるあたり結局人間変わらんのやけどさ。
神大同期にどうしても負けたくなくて、関西同期に勝ちたくて、1個下のみつのやカズマみてこいつら俺よか上手くねってなって練習して、なべしさんのNEAO2014GFに感動してこんな魂こもったスピーチしてえって思って、こすげさんの資料読んで自分のディベート観作り上げて、さくらいさんにボコられて、後輩教えながら知識体系化して、たきたやさんさんに関西の運営を支えてもらって。関西以外も然り。うん自分だけじゃ逆立ちしてもできねえな。あたりまえなんだけど。
事象の羅列でアホほど読みづらいけど、要するに、一緒にディベートしてくれてありがとうございます。楽しすぎる、って口の中で呟きながらGFの壇上に上がれたのはこのコミュニティがあったからでした。またディベートしましょう。血みどろに殴り合うやつ。
ここまで登場してないちゃんすについて。後輩であり友人でありライバルであり頼れるパートナーです。組んだのたぶん6回目だけどもっと長いことやってる気がする。
ディベートを楽しむという一点において、だれにも引けを取らないパートナーだと思っています。友情努力勝利でディベートしてる少年漫画脳。わたしが知る限りにおいて最もワクワクしながらスピーチするやつです。壇上で自信満々(っぽく)スピーチするちゃんすを視界の端に感じながらスピーチ作るのがすきです。うまくいかんかったり負けたりしても凹まずに、こことここ直して次は絶対殺すって即座に切り替えられるパートナーは私が一番求めるものでした。きみがパートナーでよかった。背中を任せるパートナーっていうと大袈裟かもしらんけど、なんというか、ディベーター冥利につきる。どうもありがとう、ワールズまでよろしく。
5回生が学生大会で優勝してはしゃいだポエムおわり。GFの録音聞いたら死ぬほど噛んでるし繰り返し多くて薄いからセンチが吹っ飛ぶ。
大会に関わった全ての方々に感謝します。ありがとうございました。また大会で会いましょう。
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山野さん優勝本当におめでとうございます。ワールズも頑張ってください!
あと記事回収してくれた川口結衣ちゃんありがとう!(*^^*)
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山野さん優勝本当におめでとうございます。ワールズも頑張ってください!
あと記事回収してくれた川口結衣ちゃんありがとう!(*^^*)
2019年10月13日日曜日
Umeko Cup 2019に際して①~早川さんからの寄稿文~
みなさんこんにちは!広報担当の小林です。
本日は先日の梅子杯でAC陣を率いた早川さんからの寄稿文です!
第25回梅子杯でChief Adjudicatorを務めさせていただいたKDSの早川です。
LINEを確認してみたらCAのオファーをいただいたのが7/18だったので、足掛け3ヶ月弱の間準備をしていたことになります。
びっくり。
今年の梅子杯は、コンセプトや取り組みの具体的な話はさておき、自分が見た中で一番の梅子杯にしたいと意気込んでコミやACの皆さんと準備を進めてきました。
客観的に見ると「いつもの梅子杯とそんなに変わらなかった」かもしれませんが、梅子とは何か、今のディベート界で梅子が果たすべき役割は何か、について運営メンバーがかなり真剣に考えた大会であったことはこの場を借りて皆さんにお伝えしておきたいと思います。
それぞれ本業がある中で使える時間に限りはありましたが、手は抜かなかったつもりです。
運営が頑張ったからといって参加者の皆さんやディベート界にとって良い大会になるわけではありませんが、どこかしら、なにかしら特別な大会になっていたことを願ってやみません。
でまあ、それとは関係なく、CAの仕事は楽しかったです!
3ヶ月間結構大変でしたが、みんなで色々相談しながら大会というお祭りを作り上げていくのは他では中々味わえない経験です。
ACのオファーって中々いただけるものではないですし、正直もう自分には回ってこないんだろうなあ…と思っていた中でのお話だったので大変嬉しかったです。
さて、私がCA / TDアドレス・ブログ・SNS等いわゆる「公の場」でディベート界に向けて情報発信をさせていただくのは約10年ぶりとなります。
そもそもSNSが苦手、論争に巻き込まれるのも苦手、コミュニティー内での立場の弱さ的に発言しても恐らく流されそう、など個人的な事情で議論に加わってこなかったということもあるんですが、それに加えて卒業生が現役のすることにとやかく口出しするのは良くないことだと思いオフィシャルな場で声を上げないスタンスをとってきました。
ディベート界はあくまで現役生のもので、Alumniは居候させてもらっている立場でしかないからです。
批評家的に意見を言って何もしない / できない「言うだけ番長」は発信者自身が思っているほど建設的ではない、というような気が個人的にはしています。
今回は幸運にも現役の皆さんに混ぜていただく機会を得て、コミュニティーの一員としてそれなりに汗をかいたと思えたので、記事の執筆をお引き受けすることにしました。
今回は、梅子杯の運営をキッカケに改めて感じた「二つの格差」について私なりの考えを皆さんにシェアさせてください。
①大学間・経験者と未経験者間の格差について
②運営負担の格差について
①大学間・経験者と未経験者間の格差について
CAのオファーをいただいたとき、最初に考えはじめたのは以下の二つのことでした。
・ここのところ梅子杯イマイチ盛り上がってない気がするな…なんでだろう。そもそも、今の現役生に梅子杯ってどう思われているんだろう
・というか、それ以前にディベート界そのものが心なしか元気がない気がする
(ここまで書いてみて、「ワシの若い頃は…」みたいな言い方になっていて我ながら恐ろしい気持ちになったんですが、続けます)
恐らく事実として、ディベート界の人口は減っています。
正確な数字は把握していませんが、代表的な上級生大会の一つである春Tの参加チーム数は数年前と比べて10~15チームほど少なくなっている印象です。
梅子については5年前の参加チーム数がちょうど50チームで、ここ2~3年は40台前半 (42~45チームくらい)です。
どういう見方をするかによってこれが何を意味するかには幅があると思いますが、
a) ディベートに取り組む大学が減っている (脱落していっている大学がいる)
b) いわゆる強豪校を含め、一大学あたりの部員数が減っている
c) ディベーターとしてアクティブな期間の平均が短くなっている (上級生になればなるほど人数が細りがちになる)
という三つの現象が複合的に起こっているのではないか、と私は考えています。
ディベート界そのものの活気がなくなっていたら、そりゃ梅子杯も盛り上がりませんよね。
もちろん、梅子杯の地位低下の背景には他にも色々な原因があるはずで、たとえば
・日本ディベート界が国際化 (Asian、BPスタイルに重きを置く)が進んだことによりNAスタイルの評価や重要度が低下した
・2009年にBinary Star Cupが、続く2010年に銀杏杯が登場したことで「1年生にとって唯一のブレイク大会 / 1年生最強決定戦」という梅子杯の特別感が薄れた
などもあるとは思います。
思いますが、なんかそれって本質からは少し遠いよなあ、というのが私の個人的な直感でした。
結局のところ、人数的・雰囲気的にディベート界の活気がなくなってきているのが直接間接に梅子杯の盛り上がりを削いでいる気がしてならないのです。
では、なにがディベート界の活力を削いできたのか。
それが格差なんだと思います。
結論自体はありきたりに聞こえるかもしれません。
みんな薄々気づいてる / 知ってることだし、実社会でも格差は社会問題として取り上げられています。
にもかかわらず、格差は拡大する一方だった。(と、私は感じています)
それは、課題意識が暗黙のものに留まっていた、そしてそれゆえにコミュニティーとしてこの問題に正面から向き合ってこなかった、対策をとってこなかったからかもしれません。
ディベートは「主に頭を使う」×「実社会で求められるスキルが直接的に競技者としての実力に反映"されやすい"」ことが他のゲームやスポーツと比べて非常にユニークな点の一つだと思います。
その結果として、「ディベートが強いこと」と「一般的な知性レベル」、ひいては「人としての価値」が同一視されやすい競技なのだと思います。
上記の正誤や是非について今回は脇に置いて事実だけに目を向けると、競技の結果が競技以外の日常生活を浸食しやすい。
端的に言うと逃げ場がなくなりやすい競技なんですね。
結果を出せる人・周囲に認めてもらえる人は日常の他の場面も含めて自己肯定感が上がりやすい、そうでない人は逆に自己肯定感が侵されやすい。
感情が両極端に振れがちで、心理的負担が重くなりがちな競技だと思います。
だからこそ結果が出せていない人に「結果が出るまで頑張れ」、「頑張れば結果が出る」と言うことは他の競技以上に酷なことであると私は思っています。
こういった競技としての心理的な特性に、大学間、そして経験者と未経験者間の格差が加わってコミュニティーメンバーが脱落しやすくなっているのではないでしょうか。
梅子杯の先行発表に書かせていただいたことを敢えて繰り返しますが、
・高校におけるパーラメンタリーディベートの普及に伴う1年生の平均レベルの上昇、BPやAsianフォーマットの大会増加による国際化の進展などの変化は、国際大会で活躍する日本人ディベーターを多数生んだ点で大変な意義があった
一方、
・AsianやBPフォーマットが主流になったことにより部員数が多く練習環境に恵まれている大学、多くのジャッジ提供が可能な大学への教育機会や大会出場機会の偏在が加速した
・大学1年生の春~夏の時点で経験者との大きな実力差を目の当たりにして気持ちが萎えてしまう未経験者が増えた
結果として、
・強豪大学に所属している経験者と、根性とセンスがあり運にも恵まれた一部の未経験者以外が排除されるディベート界になってしまっている
これが直視すべき現実ではないでしょうか。
梅子の先行告知では、「ディベートを楽しむ機会や、ディベートを通じて得られる教育機会にアクセスできない層をディベート界の中に作り、最終的にはコミュニティーから排除してきてしまったのではないか」と書きました。
語弊を恐れずに言えば、後ろ向きな・悲しい気持ちで去って行かざるをえない人が多いコミュニティーの雰囲気や将来は暗いものとならざるを得ません。
これは、強豪校の人たちにとっても無視できない問題だと私は思います。
活力のないコミュニティーで、内輪だけの大会で勝ち負けを競うことが本質的に楽しいことだとは思えないからです。
もっと踏み込んだ言い方をすると、KDSやUTDSにいるだけである程度マトモな教育が受けられて、ある程度真面目に努力さえしていれば学年大会のブレイクは確実に期待でき、恐らくブレイク後も1~2回は比較的簡単に勝ててしまうような格差のある競技に勝ち負けのカタルシスがそれほどあるとは思えない、ということです。
強豪校を含めディベーターの寿命が短くなっている (前述したc)の問題)原因の一つは、代わり映えしない大会結果と対戦相手、過剰な内輪感に「お腹いっぱい」な現役生が増えているからではないでしょうか。
だとすると、これは苦労している大学の方々をどう助けるかという上から目線での話ではなく、このコミュニティーに属するほとんどの人にとっての共通の問題であるはずです。
私は現役の頃、KDSやUT、ICUの上級生のみならず成蹊や青学の先輩 / OBOGの皆さんに大変お世話になりました。
遠方では北九州市立大学の先輩にとても懇意にしてくださる方がいらっしゃり、結婚式に呼んでいただくなどその後も親しくさせていただいています。
もちろん良い話ばかりではなく、お叱りを受けたり、大会でギラギラした敵愾心を向け合ったり、といったことも少なくありませんでした。
ただ、今よりも幅広い他大学の先輩が身近な存在で、コミュニティーとして地続きだったような印象があります。
結局「ワシの若い頃は…」みたいな話になってしまった感があって悲しいやら情けないやらですが、ディベートコミュニティーが限られた人たちの内輪になりつつあるとするならば、それは悲しいことであり、将来への不安を感じさせることです。
じゃあそうならないためにどうするの?という疑問があると思います。
正直に言うと私にも名案はありませんし、冒頭述べたように現役生に差し出がましいことを言うべきでないという気持ちもあります。
それを承知の上で幾つか思ったことを述べるとすると、以下のようになります。
まず前提として、この手の問題に立ち向かうにあたり精神論はまず間違いなく処方箋にはならないと思っています。
持続可能性がないからです。
一部の心ある人の頑張りだけで問題が解決しているなら、おそらく今こんなことにはなっていないでしょう。
注意喚起にも一定効果があるかもしれませんが、仕組みや仕掛けが必要だと思います。
a) 近隣大学で練習日程を調整し合同で練習する
AsianやBPで強豪大学とそうでない大学の差がつく大きな要因の一つが部内での試合の機会の有無ではないでしょうか。
たとえば現役生が5人しかいないのにAsianやBPの練習試合は組めませんよね。
練習したことがないことを大会で急にやるのは無理ですから、そもそも経験の面で同じ土俵に立てていないことになります。
自大学だけで練習試合を組めないなら、他大学と一緒になって練習に参加する人数を増やすのはどうでしょうか。
成蹊と東京女子大が過去に合同で練習していたり、最近でも学習院と青学が時折一緒に練習していたりするようです。
日程が合わなければ平日の練習日を減らして土日に集まる、地理的に遠ければオンラインで試合をするなど工夫の余地はあると思います。
「思い立ったベースで、行ける個人が大学間を行き来する」のではなく、地理的に近い大学同士でアライアンスを組み「定期練を共同開催する」のが大事ではないかと思います。
計画的かつ定期的な練習の共同開催は個人的に今まで目にしたことがないので、試す価値がありそうです。
b) 3年生以上の上級生をディベート界全体でプール / 派遣する仕組みを作る
3年生以上のアクティブなディベート人口が減っている中で、実績のある3~4年生・大学院生・社会人が強豪校に集中していることも、大学間格差の拡大や再生産を引き起こしている原因の一つと考えられます。
中小大学の1~2年生からすると、見ず知らずの他大学の上級生に声をかけるのはやはりハードルが高いということもあり、上手い人の技術が限られた大学内で滞留しているのだろうと思います。
また、一度お願いして来てもらえたとしても、何度もお願いするのは申し訳ない…という気持ちもあろうかと思います。
逆に、「声かけてくれないとニーズあるかどうか分からないじゃん!」、「そこは頑張れよ!」という声をかけられる側の言い分も個人的にはよく分かります。
この溝は属人的には埋めがたいものだと思います。
ですので、たとえばJPDUがハブとなって上級生のいない大学にコーチを紹介する / 派遣することで定期的に優れた技術を持っているディベーターの知識を伝える機会などが作れるといいかもしれません。
もちろん他大学に行くのは負担がないわけではないので、交通費+多少の謝礼はJPDU予算から出すなどの検討も必要かもしれません。
ちなみにこれは突拍子もない話ではなく、アカデミックディベートの世界で実際に行われている (いた?)取り組みです。
私はアカデに関わったことがほとんどないので小耳に挟んだ程度でしかありませんが、「ピースコ制度」と呼ばれているもので、下記のような制度だと認識しています。
・支援を必要とするインステに他大学の上級生を紹介する
・紹介された上級生は、派遣先のインステの練習に定期的に赴いてジャッジやレクチャーを行う
・上級生1人あたりの任期は1年程度
KDSにアカデセクションがあった頃 (!)2コ上の先輩が時たまピースコ制度の話をしていたので、恐らくKDSの後輩指導と並行して他大学の下級生の面倒も見ていたんでしょうね。
…上に書かせていただいたことは飽くまで幾つかのアイデアですが、何らかのtangible actionが今必要とされているのは確かだと思います。
ちなみに私個人については、お声がけいただければKDS以外のインステのサポートもできる範囲でやらせていただこうと思います。
②運営負担の格差について
今年はどういうわけか久しぶりに大会運営に関わることが多く、
(7月のFeminism Open、今回の梅子杯、そして11月に開催予定のSAD IV)
現役のコミの方々とも色々な場面で話す機会を得ました。
それで、話を聞いている中で感じたことなんですけど…大会とかイベントの運営してる人、偏りすぎてる気がするんですよね。
国際大会に行ったことのある方なら分かると思うんですが、日本の大会運営のクオリティーは非常に高いです。
まず、タイムテーブル通りに大会が進行するのがすごい。 (ディベーターやジャッジの協力あってこそですが)
梅子のDay 2なんてタイムテーブルよりも早く進みましたし。運営のクオリティーどうなってんだ。 (褒め言葉)
参加者の問い合わせへの対応も早いですし、何か手続きを忘れていると個別にリマインドしてくれたりします。
皆さん、頭では大会が人の手で運営されていることはもちろんご存知だと思います。
では、なぜ敢えて今回このテーマを取り上げようとしているのか。
それは、以下の二点を改めて明文化したいと思ったからです。
・大会の運営は常に人不足。特に、特定の役職は回せる人は限られる
・大会の運営に回るということは、自分が大会に出られない=ディベーターとしてのキャリアを積み上げられない
大会の運営ってディベーターにとってはインフラ的なもので、電気や水道と同じくないと困るけど上手く回っているうちはありがたみを感じにくいものだと思います。
ACに選ばれると「お、この人ACやるの初めてだよね」とか「最近この人よくAC呼ばれてるね」のように話題に上ることも多い一方、コミの人たちは中々認識されない。
(最初は「記号としてしか認識されない」的な言い回しにしようと思ったんですが、そもそも誰がやっているか気にされてないことが多い気がします。恥ずかしながら自分もその一人です)
大会・セミナー・練習会の運営は慢性的になり手不足ですが、特にTD~vTDクラスの運営全体の統括や、tabのような職人芸が要求される役職はクオリティー高く仕事を回せる人が少ないために限られた人の間でグルグル回りがちなようです。
ここからが特に重要なんですが、CDやFDのような役職を除いて、大会の運営に関わるということは自分がその大会に出られないことを意味します。
大会って1年中あるようで、実は意外と回数が少なかったりします。
JPDU Tは年に3回しかないので2~4年の全てに出たとしても全9回、これにメジャーなオープン大会を加えて国内では30回前後でしょうか。
一部大会は現役生がブレイクするのが絶望的に難しいことを考えると、チャンスの回数は有限です。
こういうワーストケースは頻繁に起こるものではないと思いますが (とはいえレアケースだから無視して良いものではない)、自分の役職を他にできる人がほとんどおらず運営に関わり続けた結果、2年生以降の大会参加実績がほとんどない人もいるようです。
自分たちが運営負担を分担しないことが他の人から出場機会を奪っている、ともすればキャリア全てを奪ってしまいかねないことは上級生全員が認識を改めるべきことかもしれません。
運営がんばっててすごいねって言うとか、大会当日に拍手するのは結局のところタダなので、実際に運営の負担を見える化して分散させられるような実効性のある仕組みを作ることができると素晴らしいなと個人的に思った次第です。
(私が認識できていないところで、既にJPDUとして動いていることもあるとは思いますが)
たとえば、大会運営に必ず運営未経験者1~2人を入れるルールを作るだけでも大会運営の大変さやありがたみを実感する人が増えそうですし、これまでの取り組みに加えて仕組み化できることもまだあるかもしれません。
…ということで、梅子杯に関係あることもないことも色々と話させていただきました。
現役生じゃないやつが何を偉そうに、分かってないくせに、と思われる部分も少なからずあると思いますが、個人的にここ数年思っていたことの一部を言語化できてスッキリしました。
直前の記事を書いたのが”ak_debate”こと加藤彰さんで、その次に自分というタイムスリップ感あふれるJPDUブログ。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
SNSはやっていないので (二回目)、感想やご意見などあれば直接話しかけていただければと存じます。
追伸:
10年ぶりで思い出しましたが、今年4月のElizabeth CupでJapan BP 2009以来10年ぶりにBest Speakerをいただきました。
「ディベート10年やってます!」とか「20回優勝しました!」とか「6年目で初めてBest adjとりました!」みたいな話は時々聞きますが、10年ぶりのBest Speakerって中々珍しいAND難しいんじゃないでしょうか (笑)
珍記録としてちょっぴり自慢。
おしまい。
早川さん、素晴らしい文章をありがとうございます!
本日は先日の梅子杯でAC陣を率いた早川さんからの寄稿文です!
第25回梅子杯でChief Adjudicatorを務めさせていただいたKDSの早川です。
LINEを確認してみたらCAのオファーをいただいたのが7/18だったので、足掛け3ヶ月弱の間準備をしていたことになります。
びっくり。
今年の梅子杯は、コンセプトや取り組みの具体的な話はさておき、自分が見た中で一番の梅子杯にしたいと意気込んでコミやACの皆さんと準備を進めてきました。
客観的に見ると「いつもの梅子杯とそんなに変わらなかった」かもしれませんが、梅子とは何か、今のディベート界で梅子が果たすべき役割は何か、について運営メンバーがかなり真剣に考えた大会であったことはこの場を借りて皆さんにお伝えしておきたいと思います。
それぞれ本業がある中で使える時間に限りはありましたが、手は抜かなかったつもりです。
運営が頑張ったからといって参加者の皆さんやディベート界にとって良い大会になるわけではありませんが、どこかしら、なにかしら特別な大会になっていたことを願ってやみません。
でまあ、それとは関係なく、CAの仕事は楽しかったです!
3ヶ月間結構大変でしたが、みんなで色々相談しながら大会というお祭りを作り上げていくのは他では中々味わえない経験です。
ACのオファーって中々いただけるものではないですし、正直もう自分には回ってこないんだろうなあ…と思っていた中でのお話だったので大変嬉しかったです。
さて、私がCA / TDアドレス・ブログ・SNS等いわゆる「公の場」でディベート界に向けて情報発信をさせていただくのは約10年ぶりとなります。
そもそもSNSが苦手、論争に巻き込まれるのも苦手、コミュニティー内での立場の弱さ的に発言しても恐らく流されそう、など個人的な事情で議論に加わってこなかったということもあるんですが、それに加えて卒業生が現役のすることにとやかく口出しするのは良くないことだと思いオフィシャルな場で声を上げないスタンスをとってきました。
ディベート界はあくまで現役生のもので、Alumniは居候させてもらっている立場でしかないからです。
批評家的に意見を言って何もしない / できない「言うだけ番長」は発信者自身が思っているほど建設的ではない、というような気が個人的にはしています。
今回は幸運にも現役の皆さんに混ぜていただく機会を得て、コミュニティーの一員としてそれなりに汗をかいたと思えたので、記事の執筆をお引き受けすることにしました。
今回は、梅子杯の運営をキッカケに改めて感じた「二つの格差」について私なりの考えを皆さんにシェアさせてください。
①大学間・経験者と未経験者間の格差について
②運営負担の格差について
①大学間・経験者と未経験者間の格差について
CAのオファーをいただいたとき、最初に考えはじめたのは以下の二つのことでした。
・ここのところ梅子杯イマイチ盛り上がってない気がするな…なんでだろう。そもそも、今の現役生に梅子杯ってどう思われているんだろう
・というか、それ以前にディベート界そのものが心なしか元気がない気がする
(ここまで書いてみて、「ワシの若い頃は…」みたいな言い方になっていて我ながら恐ろしい気持ちになったんですが、続けます)
恐らく事実として、ディベート界の人口は減っています。
正確な数字は把握していませんが、代表的な上級生大会の一つである春Tの参加チーム数は数年前と比べて10~15チームほど少なくなっている印象です。
梅子については5年前の参加チーム数がちょうど50チームで、ここ2~3年は40台前半 (42~45チームくらい)です。
どういう見方をするかによってこれが何を意味するかには幅があると思いますが、
a) ディベートに取り組む大学が減っている (脱落していっている大学がいる)
b) いわゆる強豪校を含め、一大学あたりの部員数が減っている
c) ディベーターとしてアクティブな期間の平均が短くなっている (上級生になればなるほど人数が細りがちになる)
という三つの現象が複合的に起こっているのではないか、と私は考えています。
ディベート界そのものの活気がなくなっていたら、そりゃ梅子杯も盛り上がりませんよね。
もちろん、梅子杯の地位低下の背景には他にも色々な原因があるはずで、たとえば
・日本ディベート界が国際化 (Asian、BPスタイルに重きを置く)が進んだことによりNAスタイルの評価や重要度が低下した
・2009年にBinary Star Cupが、続く2010年に銀杏杯が登場したことで「1年生にとって唯一のブレイク大会 / 1年生最強決定戦」という梅子杯の特別感が薄れた
などもあるとは思います。
思いますが、なんかそれって本質からは少し遠いよなあ、というのが私の個人的な直感でした。
結局のところ、人数的・雰囲気的にディベート界の活気がなくなってきているのが直接間接に梅子杯の盛り上がりを削いでいる気がしてならないのです。
では、なにがディベート界の活力を削いできたのか。
それが格差なんだと思います。
結論自体はありきたりに聞こえるかもしれません。
みんな薄々気づいてる / 知ってることだし、実社会でも格差は社会問題として取り上げられています。
にもかかわらず、格差は拡大する一方だった。(と、私は感じています)
それは、課題意識が暗黙のものに留まっていた、そしてそれゆえにコミュニティーとしてこの問題に正面から向き合ってこなかった、対策をとってこなかったからかもしれません。
ディベートは「主に頭を使う」×「実社会で求められるスキルが直接的に競技者としての実力に反映"されやすい"」ことが他のゲームやスポーツと比べて非常にユニークな点の一つだと思います。
その結果として、「ディベートが強いこと」と「一般的な知性レベル」、ひいては「人としての価値」が同一視されやすい競技なのだと思います。
上記の正誤や是非について今回は脇に置いて事実だけに目を向けると、競技の結果が競技以外の日常生活を浸食しやすい。
端的に言うと逃げ場がなくなりやすい競技なんですね。
結果を出せる人・周囲に認めてもらえる人は日常の他の場面も含めて自己肯定感が上がりやすい、そうでない人は逆に自己肯定感が侵されやすい。
感情が両極端に振れがちで、心理的負担が重くなりがちな競技だと思います。
だからこそ結果が出せていない人に「結果が出るまで頑張れ」、「頑張れば結果が出る」と言うことは他の競技以上に酷なことであると私は思っています。
こういった競技としての心理的な特性に、大学間、そして経験者と未経験者間の格差が加わってコミュニティーメンバーが脱落しやすくなっているのではないでしょうか。
梅子杯の先行発表に書かせていただいたことを敢えて繰り返しますが、
・高校におけるパーラメンタリーディベートの普及に伴う1年生の平均レベルの上昇、BPやAsianフォーマットの大会増加による国際化の進展などの変化は、国際大会で活躍する日本人ディベーターを多数生んだ点で大変な意義があった
一方、
・AsianやBPフォーマットが主流になったことにより部員数が多く練習環境に恵まれている大学、多くのジャッジ提供が可能な大学への教育機会や大会出場機会の偏在が加速した
・大学1年生の春~夏の時点で経験者との大きな実力差を目の当たりにして気持ちが萎えてしまう未経験者が増えた
結果として、
・強豪大学に所属している経験者と、根性とセンスがあり運にも恵まれた一部の未経験者以外が排除されるディベート界になってしまっている
これが直視すべき現実ではないでしょうか。
梅子の先行告知では、「ディベートを楽しむ機会や、ディベートを通じて得られる教育機会にアクセスできない層をディベート界の中に作り、最終的にはコミュニティーから排除してきてしまったのではないか」と書きました。
語弊を恐れずに言えば、後ろ向きな・悲しい気持ちで去って行かざるをえない人が多いコミュニティーの雰囲気や将来は暗いものとならざるを得ません。
これは、強豪校の人たちにとっても無視できない問題だと私は思います。
活力のないコミュニティーで、内輪だけの大会で勝ち負けを競うことが本質的に楽しいことだとは思えないからです。
もっと踏み込んだ言い方をすると、KDSやUTDSにいるだけである程度マトモな教育が受けられて、ある程度真面目に努力さえしていれば学年大会のブレイクは確実に期待でき、恐らくブレイク後も1~2回は比較的簡単に勝ててしまうような格差のある競技に勝ち負けのカタルシスがそれほどあるとは思えない、ということです。
強豪校を含めディベーターの寿命が短くなっている (前述したc)の問題)原因の一つは、代わり映えしない大会結果と対戦相手、過剰な内輪感に「お腹いっぱい」な現役生が増えているからではないでしょうか。
だとすると、これは苦労している大学の方々をどう助けるかという上から目線での話ではなく、このコミュニティーに属するほとんどの人にとっての共通の問題であるはずです。
私は現役の頃、KDSやUT、ICUの上級生のみならず成蹊や青学の先輩 / OBOGの皆さんに大変お世話になりました。
遠方では北九州市立大学の先輩にとても懇意にしてくださる方がいらっしゃり、結婚式に呼んでいただくなどその後も親しくさせていただいています。
もちろん良い話ばかりではなく、お叱りを受けたり、大会でギラギラした敵愾心を向け合ったり、といったことも少なくありませんでした。
ただ、今よりも幅広い他大学の先輩が身近な存在で、コミュニティーとして地続きだったような印象があります。
結局「ワシの若い頃は…」みたいな話になってしまった感があって悲しいやら情けないやらですが、ディベートコミュニティーが限られた人たちの内輪になりつつあるとするならば、それは悲しいことであり、将来への不安を感じさせることです。
じゃあそうならないためにどうするの?という疑問があると思います。
正直に言うと私にも名案はありませんし、冒頭述べたように現役生に差し出がましいことを言うべきでないという気持ちもあります。
それを承知の上で幾つか思ったことを述べるとすると、以下のようになります。
まず前提として、この手の問題に立ち向かうにあたり精神論はまず間違いなく処方箋にはならないと思っています。
持続可能性がないからです。
一部の心ある人の頑張りだけで問題が解決しているなら、おそらく今こんなことにはなっていないでしょう。
注意喚起にも一定効果があるかもしれませんが、仕組みや仕掛けが必要だと思います。
a) 近隣大学で練習日程を調整し合同で練習する
AsianやBPで強豪大学とそうでない大学の差がつく大きな要因の一つが部内での試合の機会の有無ではないでしょうか。
たとえば現役生が5人しかいないのにAsianやBPの練習試合は組めませんよね。
練習したことがないことを大会で急にやるのは無理ですから、そもそも経験の面で同じ土俵に立てていないことになります。
自大学だけで練習試合を組めないなら、他大学と一緒になって練習に参加する人数を増やすのはどうでしょうか。
成蹊と東京女子大が過去に合同で練習していたり、最近でも学習院と青学が時折一緒に練習していたりするようです。
日程が合わなければ平日の練習日を減らして土日に集まる、地理的に遠ければオンラインで試合をするなど工夫の余地はあると思います。
「思い立ったベースで、行ける個人が大学間を行き来する」のではなく、地理的に近い大学同士でアライアンスを組み「定期練を共同開催する」のが大事ではないかと思います。
計画的かつ定期的な練習の共同開催は個人的に今まで目にしたことがないので、試す価値がありそうです。
b) 3年生以上の上級生をディベート界全体でプール / 派遣する仕組みを作る
3年生以上のアクティブなディベート人口が減っている中で、実績のある3~4年生・大学院生・社会人が強豪校に集中していることも、大学間格差の拡大や再生産を引き起こしている原因の一つと考えられます。
中小大学の1~2年生からすると、見ず知らずの他大学の上級生に声をかけるのはやはりハードルが高いということもあり、上手い人の技術が限られた大学内で滞留しているのだろうと思います。
また、一度お願いして来てもらえたとしても、何度もお願いするのは申し訳ない…という気持ちもあろうかと思います。
逆に、「声かけてくれないとニーズあるかどうか分からないじゃん!」、「そこは頑張れよ!」という声をかけられる側の言い分も個人的にはよく分かります。
この溝は属人的には埋めがたいものだと思います。
ですので、たとえばJPDUがハブとなって上級生のいない大学にコーチを紹介する / 派遣することで定期的に優れた技術を持っているディベーターの知識を伝える機会などが作れるといいかもしれません。
もちろん他大学に行くのは負担がないわけではないので、交通費+多少の謝礼はJPDU予算から出すなどの検討も必要かもしれません。
ちなみにこれは突拍子もない話ではなく、アカデミックディベートの世界で実際に行われている (いた?)取り組みです。
私はアカデに関わったことがほとんどないので小耳に挟んだ程度でしかありませんが、「ピースコ制度」と呼ばれているもので、下記のような制度だと認識しています。
・支援を必要とするインステに他大学の上級生を紹介する
・紹介された上級生は、派遣先のインステの練習に定期的に赴いてジャッジやレクチャーを行う
・上級生1人あたりの任期は1年程度
KDSにアカデセクションがあった頃 (!)2コ上の先輩が時たまピースコ制度の話をしていたので、恐らくKDSの後輩指導と並行して他大学の下級生の面倒も見ていたんでしょうね。
…上に書かせていただいたことは飽くまで幾つかのアイデアですが、何らかのtangible actionが今必要とされているのは確かだと思います。
ちなみに私個人については、お声がけいただければKDS以外のインステのサポートもできる範囲でやらせていただこうと思います。
②運営負担の格差について
今年はどういうわけか久しぶりに大会運営に関わることが多く、
(7月のFeminism Open、今回の梅子杯、そして11月に開催予定のSAD IV)
現役のコミの方々とも色々な場面で話す機会を得ました。
それで、話を聞いている中で感じたことなんですけど…大会とかイベントの運営してる人、偏りすぎてる気がするんですよね。
国際大会に行ったことのある方なら分かると思うんですが、日本の大会運営のクオリティーは非常に高いです。
まず、タイムテーブル通りに大会が進行するのがすごい。 (ディベーターやジャッジの協力あってこそですが)
梅子のDay 2なんてタイムテーブルよりも早く進みましたし。運営のクオリティーどうなってんだ。 (褒め言葉)
参加者の問い合わせへの対応も早いですし、何か手続きを忘れていると個別にリマインドしてくれたりします。
皆さん、頭では大会が人の手で運営されていることはもちろんご存知だと思います。
では、なぜ敢えて今回このテーマを取り上げようとしているのか。
それは、以下の二点を改めて明文化したいと思ったからです。
・大会の運営は常に人不足。特に、特定の役職は回せる人は限られる
・大会の運営に回るということは、自分が大会に出られない=ディベーターとしてのキャリアを積み上げられない
大会の運営ってディベーターにとってはインフラ的なもので、電気や水道と同じくないと困るけど上手く回っているうちはありがたみを感じにくいものだと思います。
ACに選ばれると「お、この人ACやるの初めてだよね」とか「最近この人よくAC呼ばれてるね」のように話題に上ることも多い一方、コミの人たちは中々認識されない。
(最初は「記号としてしか認識されない」的な言い回しにしようと思ったんですが、そもそも誰がやっているか気にされてないことが多い気がします。恥ずかしながら自分もその一人です)
大会・セミナー・練習会の運営は慢性的になり手不足ですが、特にTD~vTDクラスの運営全体の統括や、tabのような職人芸が要求される役職はクオリティー高く仕事を回せる人が少ないために限られた人の間でグルグル回りがちなようです。
ここからが特に重要なんですが、CDやFDのような役職を除いて、大会の運営に関わるということは自分がその大会に出られないことを意味します。
大会って1年中あるようで、実は意外と回数が少なかったりします。
JPDU Tは年に3回しかないので2~4年の全てに出たとしても全9回、これにメジャーなオープン大会を加えて国内では30回前後でしょうか。
一部大会は現役生がブレイクするのが絶望的に難しいことを考えると、チャンスの回数は有限です。
こういうワーストケースは頻繁に起こるものではないと思いますが (とはいえレアケースだから無視して良いものではない)、自分の役職を他にできる人がほとんどおらず運営に関わり続けた結果、2年生以降の大会参加実績がほとんどない人もいるようです。
自分たちが運営負担を分担しないことが他の人から出場機会を奪っている、ともすればキャリア全てを奪ってしまいかねないことは上級生全員が認識を改めるべきことかもしれません。
運営がんばっててすごいねって言うとか、大会当日に拍手するのは結局のところタダなので、実際に運営の負担を見える化して分散させられるような実効性のある仕組みを作ることができると素晴らしいなと個人的に思った次第です。
(私が認識できていないところで、既にJPDUとして動いていることもあるとは思いますが)
たとえば、大会運営に必ず運営未経験者1~2人を入れるルールを作るだけでも大会運営の大変さやありがたみを実感する人が増えそうですし、これまでの取り組みに加えて仕組み化できることもまだあるかもしれません。
…ということで、梅子杯に関係あることもないことも色々と話させていただきました。
現役生じゃないやつが何を偉そうに、分かってないくせに、と思われる部分も少なからずあると思いますが、個人的にここ数年思っていたことの一部を言語化できてスッキリしました。
直前の記事を書いたのが”ak_debate”こと加藤彰さんで、その次に自分というタイムスリップ感あふれるJPDUブログ。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
SNSはやっていないので (二回目)、感想やご意見などあれば直接話しかけていただければと存じます。
追伸:
10年ぶりで思い出しましたが、今年4月のElizabeth CupでJapan BP 2009以来10年ぶりにBest Speakerをいただきました。
「ディベート10年やってます!」とか「20回優勝しました!」とか「6年目で初めてBest adjとりました!」みたいな話は時々聞きますが、10年ぶりのBest Speakerって中々珍しいAND難しいんじゃないでしょうか (笑)
珍記録としてちょっぴり自慢。
おしまい。
早川さん、素晴らしい文章をありがとうございます!
長年パーラに関わってきた人だからこその文章で、読み応え抜群でした!
Umeko Cup 2019のチャンピオンチームからも寄稿文をいただく予定です。
近日公開です、楽しみに待っていてくださいね!
2019年9月19日木曜日
Kyushu Debate Openに際して③~加藤さんからの寄稿文~
連投失礼します。広報の岡田です
今回はKyushu Debate Open(QDO)のCo-Chief Adjudicator兼SDGs Officerを務められた加藤彰さんに記事をお願いしました。
ディベートという競技の社会的意義なども発見できる名文になっておりますのでぜひお楽しみください。
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こんにちは、Kyushu Debate Open 2019(以下QDO)のCo-Chief Adjudicator(共同審査委員長)兼SDGs Officerを務めさせて頂きました加藤彰と申します。
私は2009年に東京大学英語ディベート部(UTDS)に入部したのがディベートに携わる最初のきっかけでした。色々な方にご迷惑をおかけしながらも10年目に至るわけですが、そのおよそ半分もの期間にQDOに関与させて頂いていることになります。すでに素晴らしい記事が参加者及びTD(大会運営責任者)の方からある中で恐縮ですが、私からもお話しできればと思います。長くなってしまったので、最悪太字の部分だけお読みください。
1. 九州地域でディベートを盛り上げたいという"想い"に共感
QDOとの出会いは、2014年に「ディベートが盛んではないこの地域を盛り上げたい!」という九州大学の学生の方にお声がけ頂いたのが始まりでした。私は当時大学院2年生でした。
その時、過去に参加した濱口杯やHakata Ramen Cupでの思い出や、1年の梅子杯で知り合った九州地域の大学の人たちの顔がまず過ぎりました。それから、私は少し恥ずかしいのですが「理不尽さを0にしたい」という想いを持っており、ディベートをしたくても十分に楽しめない、という所謂「ディベート格差」の問題にも対応したいと思っていました。私は東京でディベートを6年間しており、自大学・他大学含め優秀で優しい先輩・同期・後輩に恵まれたためディベートの成長機会に恵まれていました。一方で、当時15大学位で地方も含めボランティアでレクチャーを通じ感じたのは「機会の不平等」でした。
この機会の不平等の観点は色々あり得ますが、「地域」というレンズで見てみると、私は東京の大会にどんなに長くても電車で1時間(また、朝に弱い私は会場の近くの友人の家に泊まらせてもらったので徒歩圏内だったことも)の環境であった一方、地方からはバイト等で貯めたお金で夜行バスやLCCを駆使して大会に来なくてはならない、さらにはその機会も限られる、ということが問題だと思いました。
何かしら九州に恩返しをしたい、さらには自分が問題視している理不尽さの解消にも寄与したいと思い、立ち上げメンバーとして参加させて頂きました。以降、(2015年を除く)毎年審査委員長としてお声がけ頂いておりますが、毎年変わらないのは九州地方のディベーターの「想い」でした。今や日本で最も歴史のある世界大会様式のディベート国際大会となり、アジア大会(UADC、ABP)や世界大会(WUDC)で活躍するディベーターが一堂に会する場に少しでも自分がお役に立てるのであれば、と思い今年も参加しました。特に今年は、去年副大会責任者(VTD)を務めていた姫野さんが2年連続で、かつ就職活動もある中大会責任者(TD)を務めるということで、返事2つでOKしました。
2. 「全員のディベーターが九州に来てよかった」と思えるようにしたい
2014年からのDNAとして根付いているのは、高い交通費・宿泊費、さらには参加費に見合うように、「九州に来てよかった」と思えるようにしたい、ということでした。
毎年、会議を重ね、「ディベート大会としての質」、および「イベントとしての質」両方をいかに高められるか、と議論しています。(もちろん、至らないところも多々ありご迷惑をおかけしているかもしれませんが…。)
前者は、可能な限り多くの国からのディベーター・ジャッジをお呼びできるように、マーケティング含めコミが一丸となって頑張らせていただいています。普段の国内では味わえない、見たことない議論への対応、自分のことを一切知らない人によるジャッジ等はワクワク感が大きい、という声も頂戴しました。
また、今年からよりディベートの「教育」や「成長」の観点を強化できないかとコミの皆さんと考えました。今年は大会前日の金曜日に世界大会の副審査委員長をはじめとした人たちによるディベートのパネルディスカッション、ワークショップ、大会翌日の月曜日にディベート研究者/実務者によるディベート学会も開催しました。(ディベートコーチはどう振舞うべきか、EFLのディベートコミュニティはどのように発展できるのか、等海外発表者を中心に面白い議論ばかりでした!)また、大会中という意味では、ラウンドの間にできるだけ"Demo Debate"という形で、世界トップクラスのPM、LOスピーチが聞けるというのは、私自身も勉強になっています!
後者の「イベントとしての質」は、まさに九州の学生が創意工夫を施してくれています。食事やブレイクナイトに日本らしさ、九州らしさを散りばめている結果が、今年のオープニングの太鼓の演奏、書道の経験等に繋がっているかと思います。また、九州の学生がすごいのは「去年よりさらに良くするには」という飽くなき探求心にあるかと思っており、私自身も楽しみにしています。
3. ジャッジやコーチ、教育関係者、ディベートを何かしら活かしたいという人にも九州に来てほしい
上記の話とも少し被るのですが、私は秘めた思いとしては、ディベーターとしてだけではなく、他の観点でもぜひ九州に来ていただきたい、と思っています。
一番分かりやすいのはジャッジだと思います。実は例年数名の方がIndependent Judgeとして大会に参加してくださっています。ブレイクは、毎年一緒にジャッジした人による総合評価によって決めさせていただいているのですが(よく誤解されるのですが、毎年全員自動ブレイクではありません…)今年は参加頂いた方は4人のジャッジからとても高評価でブレイクとなりました。あいにくブレイクに届かなかったとしても、とはいえ、国内外のディベーターが入り混じる難しい試合を、世界トップレベルのジャッジとディスカッションするのはすごく面白い、なかなか無い機会だと思っています。私も例年、ジャッジとして世界のジャッジの見方・説明の仕方、さらにはディスカッションの進め方にインスパイアされており、学ぶことがたくさんあるな、と思っています。言い方を変えると、レクチャーなどと違い、個別具体のラウンドで、緊張感のある中、自分のジャッジのクセやできていること、できていないところを「見える化」するいい機会だとも思っています。
また、前述したパネルディスカッションやワークショップ、学会は、ディベーター、ジャッジ以外の人も楽しめるように進化させたいという思いのもと、スタートしています。実は私はこっそりと九州大学の学術研究者というポジションを頂戴しており、「ディベート教育国際研究会」という学会の役員も務めております。毎年理論と実践の両輪で学ぶことが多々あります。「ディベートについてディベートする」、「ディベートを科学する」、「ディベートを教育とより掛け合わせる」などのキーワードにピンときたら、ぜひいらしてください。(ちなみに私は数年前に即興型ディベートでに身につく能力の研究を、最近はディベートとディスカッションの関係や、ディベート大会の運営に関して研究しています。)
4. ディベートをより社会にも広めたい…その一つのキーワードとしてのSDGs
別の角度からこの大会の特色を語ると、SDGs(Sustainable Development Goals)があるかと思います。外務省の説明を引用すると、「2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています」というものになります。私はこれを、「社会課題」に関するグローバルの共通言語だと捉えております。
QDOでは、「SDGs元年」と呼ばれた去年から、世界で初めてSDGsにコミットしたディベート大会となりました。具体的にはすべてのラウンドはSDGsに関連させ、マネジメントにもSDGsを活用しました。なぜSDGsにコミットしたか、という理由は幾つかありますが2つだけご紹介します。
1つは、「ディベートをラウンド部屋だけで終わらせるのはもったいない」、社会により広く広めたい、という想いがあります。例えば、アジアのトップディベーターで、最年少で内閣入りもしたSyed SaddiqのTEDの動画をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=FqCZX3WtlZc
私なりの解釈をすると、ディベートは「ドア・オープン力」だ身につく競技だと思っています。 ①インプットとしての様々な社会課題に関する知識、②プロセスとしてのスピーディーな思考力、③アウトプットとしての論理的・感情的な分りやすさを意識したプレゼンテーション力が身につくと思っています。(詳しくはhttps://note.mu/akirakato/n/n4eaa37770cd8)これの①に当てはめると、ディベーターがリサーチをする際に、SDGs、さらにはその背景にある社会課題の多くをリサーチする契機(あわよくば、その後のアドボカシー等に繋がる機会)になると嬉しいと思いました。
また、私はディベートがSDGs教育(広く言うと、ESD: Education for Sustainability Development)や研修ともとても親和的だと思っています。あえて誤解を招く表現でいうと、SDGsをフックにディベートに興味関心を抱いてくださる人が増えてくれることにも期待しています。事実今年は、ディベートを知らない人たちが大会の見学に来てくださり、さらにこれを強化したいと思いました。
2つ目の理由としては、SDGsというレンズで大会運営を見直すと、より多くのディベーターやその他のステークホルダーの理不尽さを減らすことにもつながるということもあります。例えば10番の目標の「人や国の不平等をなくす」に注目すると、ジェンダー、障害*の有無や言語の壁に関係なしに大会を楽しむためにはどうするか、と考えるキッカケになります。(例えば、Equity PolicyやOpt Out Policy等を早期から議論することにも繋がりました。)12番の目標の「持続可能な消費と生産のパターン」に注目すると、リサイクルの促進やフードロスの削減などのためにどうするか、と考える契機になります。より大会を持続可能にし、社会に貢献するためにはSDGsがぴったりだと思いました。
(*障がい、障碍などの表記もありますが、常用漢字を採択させていただきました。)
5. 「スクラム戦」の一員になってくれませんか?
例年そうなのですが、九州地域でこの国際大会を開くことは「スクラム戦」であると思っています。特に今年、最後の写真撮影をした際に、コミッティーの数に改めて驚かされました。
私は実はこっそりと運営のLINEに例年入らせていただいているのですが、約半年にわたって、ほぼ毎日LINEの通知が来ている状態でした。というのも、QDOの運営は色々な観点から難易度が高いというのがあります。例えば、巻き込むべきステークホルダーの数が多様であることが影響しています。国内のディベーターだけではなく、海外のディベーターとなると、ビザの支援や宗教などにも配慮した食事の準備等もより重要になりますし、例年QDOは九州大学に加え、外務省、文科省のような公的機関からの後援も頂戴しています。必然的に仕事の量は肥大化する傾向にあります。また、それを比較的運営の経験が少ない人たちで行うというのもチャレンジです。
思い返すと、立ち上げ期から多くの方にご協力いただいております。2014年から何年も、いわゆる学生及び社会人の「コミのプロフェッショナル」の方にご協力頂いています。そして何よりも九州のファンの皆様の「スクラム戦」である、につきます。例えば、もうQDOに携わるのが5、6回目だという人もたくさんいます。改めて御礼申し上げます。
ここでのお願いは、ぜひ皆様もこの「スクラム戦」の一員になってくれませんか、ということです。
別に大会の運営の一員として参画してほしい、ということではありません。(もちろん、それは大歓迎ですが!)九州地域の学生は、「どのようにすればディベートがより盛り上がるか」「QDOをよりよくするにはどうすればよいか」と日夜考えています。それに対する温かい支援であったり、アドバイスやご意見等、いつでも大歓迎です。また、ぜひ、QDO 2020、さらにはその先にもお越し頂ければと思います。
長くなってしまいました。ポイントとしては、QDOは九州地域でディベートを盛り上げたいという"想い"によって運営されています。ぜひ、皆様もQDOにいらしていただければ嬉しいですし、「スクラム戦」にご協力いただけることがあれば、狂喜乱舞します。
(なお、QDOに関するご意見はkyushu.debate.open.since2014@gmail.comまでどうぞ)
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QDOという大会にこれほどのこだわりが詰まっていることに驚きとともに感動を覚えますね。
AKさん、ありがとうございました!
2019年9月17日火曜日
Kyushu Debate Openに際して②~姫野さんからの寄稿文~
急に気温が下がってきましたが、みなさま秋支度はお済みでしょうか。
お久しぶりです。広報の岡田です(*^^*)
QDOに関するブログ第二弾ということで、今回はQDOでTDを務められた姫野さんに記事をいただきました。
大会運営の難しさと素晴らしさ、QDOという大会に込められた思いをご実感ください。
JPDUブログをご覧の皆様、はじめまして。九州大学の姫野海優と申します。数多くの実績ある方々が寄稿されるこのブログ、投稿する機会は一生訪れないと思っておりました。しかし今回ご依頼をいただきましたので、恐縮ではございますが運営的な面でKyushu Debate Open 2019(以下QDO 2019)について思うことを書かせていただきます。QDOについて知ってもらい、来年度以降に参加してもらえるような文章を心がけました。
以下目次です。
Ⅰ QDOが九州で開催されるということ
Ⅱ QDOが国際大会であること
Ⅲ QDO 2019への感謝と今後について
Ⅰ QDOが九州で開催されるということ
=運営はカツカツだけど、どうしても開催したい
私自身のQDO最初のコミットは、1年次のディベーターとしての参加でした。右も左もわからない状況で国際大会に参加することになったわけです。そのとき、大会を運営している先輩方をみて強く憧れました。このときに運営としてQDOに携わってみたい、この大会が存続できるよう自分も貢献したいと思うようになっていました。
二年になりVTDとして運営に携わり、三年でいよいよTDに就任しました。決定後、実際にコミメンバーを集めることになり、九州大学のESSメンバーに声をかけました。結論として集まらない実態に愕然としました。九州大学ESSに所属しているメンバーが約100名、うちディベートセクションが約50名、QDOを運営するために必要なコミが20名、どうしても集まらず悩みました。原因として①そもそも積極的に活動している人数は20名いるかいないか②その中でも大会参加経験が少ないため大会に具体像が見えない、③未知数な仕事内容に抵抗があるなどが考えられました。その壁を乗り越えない限り運営はし難い状況でした。そこで、昨年度以前のコミ経験者を必ず各役職に配置することにしました。困ったときに誰に聞けばいいかわからないという意見から考えた案です。実際に、こうすることで各役職の複数人の中で情報の一貫性を確保することができ、運営の改善にもつながりました。来年以降も、この循環が見込めるようにしたいところです。
しかしこのような状況下で、九州地方で大会を開催することに意義があるのかと疑問に感じるのではないでしょうか。実際に開催については何度も協議されました。しかし、この大会が九州の学生にとって大きな転機になるのは事実です。関東関西名古屋圏に遠征に行ける余裕がない、ガラパゴス化した環境で他地域との交流がなかなか担保できない、という地理的不利を乗り越えるためのQDOである、と私は強く感じています。年に一度この大会に運営やディベーターとして関わることで、自分なりのディベートキャリアへの考え、パーラメンタリーディベートの魅力を再確認する場になっていると考えています。今後も九州地方でQDOを続けることは、それに伴う困難を乗り越える価値のあることだと思います。
Ⅱ QDOが国際大会であること
=参加してほしい、何か価値を生むものであってほしい
QDOは国際大会として参加者を全世界から募集しています。BPの国際大会としては日本初で、苦労しながらも規模を拡大してきました。特に提供ジャッジを必要としないことは、特徴の一つです。それを担保するために必要なことは、資金確保です。もちろん参加者が増えれば、参加費は減ります。しかし参加人数は年度によっても変わりうるもので、安定しません。ですのでQDOは、スポンサーを集めるために後援を得るという過程を毎年行ってきました。今年も新たに二つの公的機関からの後援を獲得しています。後援はすなわち大会への信頼につながります。手続きに労を費やしても必要なことです。その効果か、徐々にスポンサーとしてサポートしてくださる方の数が増えてきました。参加費を減額し、できるだけ多くの方が国際大会に参加できる環境のためにも、資金確保は今後も最大の課題です。
テーマとして昨年度からSDGsを取り入れているのも、国際大会という部分に起因しています。恥ずかしながらこのテーマを取り入れた当時の私は、SDGsという存在を認識すらしていませんでした。QDOがテーマに取り入れることで理解できる人間が実際にいるのではないかと実体験を元に感じました。ユニバーサルな目標として採択されているものを、ディベートを通して理解し、実践することにまでつなげることで、QDOや参加者の方々がSDGsにも貢献できるように取り組むことは重要だと考えています。
また、QDO 2019は「日本の国際大会」という点に注目しました。参加者の方に対して、九州に来て良かった、日本に来て良かったと感じていただけるような大会になるようにしました。たとえば、和太鼓パフォーマンスや、書道体験です。ブレイクナイトやクロージングムービーまで、日本らしさや大会としてのホスピタリティを高めるために尽力しました。結果として大会後のアンケートで好評をいただき、大変嬉しかったです(重い習字道具を家から持ってきた甲斐があったなと思いました笑)。ひとえに、各役職が自発的に行動し国際大会としての質を高めようとした成果だと思っています。
参加費の減額は課題ではありますが、QDOがどの大会にもない魅力をもったものになるためにも、アンケートに甘んじることなく、常に前進を目標に取り組んでいきたいです。
Ⅲ QDO 2019への感謝と今後について
紆余曲折ありましたが、QDO 2019は無事に終了することができました。参加してくださった方々、支援してくださった方々など関わってくださった方すべてに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。特にACグループ、CAの加藤さん、Joshuaさん、Hungさんには数多くの連携、アドバイスをいただきました。ありがとうございます。またコミのメンバーへ、難題を課したことはすべて完遂できると信じてのものでした。たくさんのすみませんとありがとうございます、を伝えたいです。最後に、史上最強のQDOにすることを個人的目標として取り組んできました。後悔もありますが私自身たくさんの時間をかけた分、かけがえのない経験を得ることができました。来年度以降への継続コミットが、QDO 2019のTDとしてのroleと考え、貢献していこうと強く思います。
九州地方でのオープン大会は年に一度だけです。総力を集めて来年も開催できるよう精進いたしますので、ぜひ全国、全世界からのご参加をお待ちしております。
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姫野さん、TD本当にお疲れ様です、そしてありがとうございました!
2019年8月29日木曜日
Feminism Openに際して~倉田さんからの寄稿文~
皆様はじめまして。広報の川口と申します。
徐々に秋らしさが深まっていくはずなのですが、まだまだ残暑が続きますね。
さて、今回は先日(先日…?)行われたFeminism Openのブログ記事となります。
徐々に秋らしさが深まっていくはずなのですが、まだまだ残暑が続きますね。
さて、今回は先日(先日…?)行われたFeminism Openのブログ記事となります。
大会から記事掲載まで非常に時間が空いてしまい申し訳ありません。
TD兼DCAを務めた倉田芽衣さんからの寄稿文です。大会の開催から当日の様子、細やかな論題解説まで、倉田さんの熱いフェミニズムに対する想いが伝わってくる非常に読み応えのある記事です…!
それではお楽しみください。
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はじめに
今回フェミニズムに関する論題でディベートする、という大会を開催できたことは大変喜ばしいことでした。運営メンバーとフェミニズムに関連する問題について考える場を作れて、とても楽しい数ヶ月を過ごせました。高校時代に開催した部内大会を除けば、私にとって今回の大会が初めて運営側に立たせてもらう機会でした。こんなに経験がない私の、フェミニズム論題についてじっくり考え学ぶ機会を設けたい!という願望を実現してくれた皆様に心から感謝しています。
また、私にとってフェミニズムに関わる問題について自ら調べ、自ら学び、様々な状況や痛みを想像し、意見を発信してみるというのは、それ自体が既にフェミニスト的行動であると信じているため、そうした場を設けることが出来たこと自体に大変満足しています。
そんな今回の大会開催において、TDとして、参加された皆様や日本のディベートコミュニティに届けたかった思い(の一部)を書いてみました。少しでも既に伝わっていたら幸いですが、この寄稿を読んでいただけたらより詳しく分かるかと思います!
1.大会ロゴについて
2.事前配布資料について
3.論題について
4.副賞の図書について
の4点について書きました。論題についてでは、それぞれのモーションの簡単な解説も書きました。復習などにご利用ください。最後の著書のリストも今後のジェンダー、セクシュアリティなどが話題となるモーションに向けたリサーチにもしかしたら役立つかもしれないのでもし良かったら参考にしてみてください。
1.大会ロゴについて
本大会のロゴはメディアディレクターの知念くららさんに作成してもらいました!コンセプトは日本ディベートコミュニティにフェミニズムの波を起こそう!という感じです。作成する時に参考にしてもらったキーワードは、「優しさ」「学び」「Intersectionality」「ポジティブエネルギー」などでした。
ちなみに元の参考にした絵にはゴジラが居ました。
色合いも可愛過ぎず尖りすぎず、ラインも優しいけども元気に溢れていて、波をモチーフとしたデザインもフェミニズムの波を連想させる最高すぎるデザインだと思います。
ステッカー作れば良かったかしら!今からでも遅くないかな……笑
欲しい方は倉田芽衣までご連絡ください!作ります。
2.事前配布資料について
事前配布資料はCAの浦野君を中心にACチームで書きました!
目次としては、
Foreword: On Feminist Academia, Activism and Debating
Chapter 1: On Intersectionality
Chapter 2: On Different Types of Feminism
Chapter 3: On Feminism and Waves
という感じでした!
Facebookの浦野くんの投稿を読んでもらえれば分かると思うのですが、フェミニストモーションをディベートするにあたって押さえておくと良さそうなテーマを厳選して読みやすいように数ページにまとめて執筆いたしました!
全体を通して、「フェミニズムって色んな人が色んな形で体現し紡いできたムーブメントなんだよ!だからそういう多様性を鑑みた分析はより良いディベートをきっと作るよ!」というintersectionalityをゴリ押ししたメッセージが少しでも伝わっていたら幸いです。
良くフェミニズムモーションのディベートを聞いていて思うのは、「あ〜、またフェミニズムを一枚岩的なふんわりしたムーブメントにしてる〜」とか、「もっと他にもアクターいるよ〜」とか、「このモーションは波で分けるよりラディカルフェミニズムとリベラルフェミニズムの対立のが分かりやすいんだけどな〜」みたいな、おそらくジェンダー学オタク故の感想なんですけど、今回四人で作成した少しの資料だけでも、だいぶフェミニズムモーションでのイラストやクッキーカッターの幅が広がるかなーって思います!
3.論題について
今回全てのモーションを通じて心がけていたのは、
・古典モーションのように争点が分かりやすいのでイラスト勝負になってくるいかにもパーラメンタリーぽい試合が出来そうなモーションにすること
・フェミニズム=一枚岩的な分析ではなく、インターセクショナルな分析が必要となってきたり、そういう分析が出来ると議論が深まるモーションにすること
・性暴力や性差別などのトラウマを持っている当事者もディベートが出来そうなインクルーシブなモーションにすること
・ぱっと見ロックな感じをなるべく大事にすること
・モーションの前に出すクオート
の5点です。
では、簡単な論題解説をしていきます!
[Round 1]
Theme: “How stupid that all I have to do is grow two squishy lumps and suddenly I'm man's best friend.” - Christine Hppermann
Motion: As feminists, THS all forms of self-commodification of one’s sex appeal, including but not limited to sex work, escorting, sugardaddying/mommying, and starring in porn videos.
争点: 自分の色気などを使って商売することをフェミニストとして推せるか推せないか
この争点に全て集約されると思うのですが、もう少し細かく議論を分けると、
①自分の性的な魅力を使ってお金を稼ぐことは現状どういう社会的な意味があるのか
②いわゆるソフトからハードな性産業に携わる人達はどのような扱いを受けているのか
③フェミニズムって何を優先したいの?まず性的な魅力を女性に期待しないノームを作ること?性的に魅力的でもそれは性行為への同意ではないというノームを作ること?性産業や性的サービスに対する社会的評価を上げること?これらのゴールを目指すことは相容れるの?
④Self-commodificationを支援するとslut shamingなどから逃れたい人や地味な服装をしている人などが辛い思いをする?
⑤そもそもself-commodification of one’s sex appealをしている人には様々な層があり、パパ活を楽しんでやっている人は断れるからいいけど、お金のためにやむを得なく従事している人達のself-commodificationまでlegitimate choiceになってしまうと生活保護に頼ったり学校教育などをより充実させていくことが難しくなるのでは?そもそもフェミニズム運動などに参加出来ない貧しい女性達がprivilegedなフェミニストの主張のせいで守られなくなってしまうのでは?
⑥Self-commodificationは果たして常に同意の元行われているのか?当事者達はどれくらい自分のプロデュースを主導的に出来るのか?買い手の嗜好や意向はどれくらいハームフルなのか?
⑦性的な魅力の売り買いでの富の再配分は性的な魅力という点で優れている人が頂点たつ極めて不平等な配分方法でないか?一番弱い人からupliftしたいintersectional socialist feministとしてそれは推せる?
⑧フェミニストは様々な人間関係における平等性を求めている。お金の受け渡しが発生した瞬間に雇用主と労働者という非対称的な人間関係が生じてしまうので、性愛的な関係においてself-commodificationは推せない
などがあると思います。
ちなみにテーマに使ったクオートの意味はおっぱいがあるだけで魅力的になるのくさぁ!みたいな感じです。性的魅力という概念のへんてこさを笑っていますね。うふふ。
Keywords: sex work, slut shaming, bra burning, pornografication
[Round 2]
Theme: “There's no reason why a society consisting of rational beings capable of empathizing with each other, complete and having no natural reason to compete, should have a government, laws, or leaders.” - Valerie Solanas
Motion: THBT Japanese feminists should advocate for the abolition of the Imperial system (天皇制) as opposed to advocating for the inclusion of female imperial members in the line of succession for the Imperial throne.
争点: 日本人フェミニストとして天皇制廃止を推す?
①天皇制ってなに?少数が多数の税金によって生かされているっていう構造フェミニストとして頂けなくない?
②天皇制に反対するとどんなバックラッシュを受ける?
③日本の今の政治状況的に天皇制廃止を声高に叫ぶと自民党政権が既に強いからフェミニスト政治の勝ち目現状よりさらになくならない?
④天皇家に生まれたことでの人権被害やばくない?フェミニズムって人権守りたいよね?その人権被害ってシステム廃止しないと解決できないの?
とかですかね!モーションの解釈として、女性天皇を日本人フェミニストが応援するべき理由は言っても言わなくてもオポーズは出来ますね!天皇制廃止は言わない方がええで!!!っていう理由があれば十分かな。
このラウンドのテーマクオートは天皇制とかだけじゃなくて最早アナーキーを謳ってますね。ヴァレリーソラナスさんはSCUM Manifestoの著者でもあります。SCUMの略はSociety for Cutting Up Menです。この方はいろいろロックで興味深いですよ!物凄く想像力が豊かで、patriarchyに対してとっても批判的な思考を巡らせてます。
Keywords: anarchist feminism, post-colonial feminism, imperialism, liberal feminism
[Round 3]
Theme: “The history of mankind is a history of repeated injuries and usurpations on the part of man toward woman.” - The Declaration of Sentiments and Solutions
Motion: THBT women who have experienced gender based discrimination are justified in committing misandry.
争点: 性差別を受けた女性は男性に対する差別を行なってもよいのか?
①被害者は無作為に男性差別をしていいの?直接的な加害者以外の人に対する差別は許されるの?
②被害者が加害者になることは正当防衛と同じと捉えられるの?
③現状、非男性が男性に比べ権力を持っていない状況において、どのような男性差別が起こりうるだろう?
④Why must one go high when they have stooped so low? In other words, why must one treat another person well when they have been so horrible as a group historically?
⑤憎悪を憎悪で返す時、どのような解決策が見いだせるだろう?被害を受けることを通して学べることはあるだろうか?
⑥社会全体での不平等を鑑みた上で、不平等に不平等で対抗する構図は富の再分配やアファーマティブ・アクションと相似ではないだろうか?
など!とても興味深い問題ですね。白人差別やお金持ち差別は本当に存在するのか?などの議論と似ているのは、社会における権力構造を鑑みた上で、持たざる者が持つ者に対抗するのは差別として弾劾されるべきではない、などの主張かと思います。少し違うのは、ジェンダーノームは男性も縛っていることから、必ずしもoppressorチームを選択して生きているわけではないということ。ただ、たとえ全ての男性を対象として無作為に差別行動を行っていたとしても、チームoppressorから主体的に外れようとしている、言わばフェミニストな男性はそこまで被害を実際には被ることはないのでは、という主張も興味深いです。あくまで、社会全体の権力構造の中での話をすることがこのモーションのポイントかなと思います。
Keywords: misandry, misogyny, horizontal violence, white tears
[Grand Final]
Theme: “The benefits of feminism for someone like my husband are fantastic. He can stay at home with the kids, he can take them to a park, he does the school run.” - Helen McCrory
TH as the feminist movement would advocate for the introduction of a socialized care system in which all people needing care (the elderly, people with disabilities, etc) are cared for by workers selected by a national draft system
争点:なぜフェミニスト運動はくじ引きケアワーク制度(徴ケアワーカー制)を推すべき・推さないべきのか
①どのような人達がケアワークをしているのか?→介護や保育などのケアワークを主にしているのは女性であったり家族?これの何がいけないの?
②ケアワークを社会としてどのように割り振るべき?→くじ引き制度?家族?プロに任せる?
③ケアワークが得意なのは女性だと思われてることなどのケアワークに関するイメージは現状どのような問題を引き起こしている?女性に押し付けられている?中年男性がケアワークをすると(保育士など)クレームが出たりするのもだめじゃない?女性が多く就いている職業の収入が低いのとも関連してる?
④くじ引き制度は本当に現状より平等なの?
⑤くじ引き制度はケアを受ける人達に適切なケアを施すことができるの?
⑥フェミニスト運動としてなぜ上記の点について頑張ることが大事なの?
みたいな感じです。あくまでフェミニスト運動はどうするべきかモーションなので、ケアワークの現状や新しく導入するシステムに関する議論を展開してもモーションを肯定否定するアーギュメントにはならないのが少しトリッキーなところでしょうか。現状についてや導入する制度の公平性などについて時間をかけすぎてしまいなぜフェミニスト運動がってところの分析が浅はかな感じだとちょっと残念なディベートかな〜と私は思ってしまいます。あくまで個人的な意見ですが。また、この手のモーションについては、無償労働、pink ghettoization、pink collar workなどのキーワードでリサーチするとより包括的に学べると思います。あとは、竹信三恵子氏の『家事労働ハラスメントー生きづらさの根にあるもの』も日本のケアワークや無償労働について学べるオススメ図書です。
Keywords: carework, pink collar, pink ghettoization, unpaid labor, emotional labor, socialist feminism
4.副賞の図書について
副賞の図書は運営チームとして参加したみなさんにとってなるべく多くの学びがあってほしいなと思い、基礎的な内容から発展的な内容、または現状起こっているフェミニズムに関連の深い社会問題のケーススタディ的な図書を選ばせてもらいました。
また、個人的にもジェンダーについて勉強するためのおすすめの図書を聞かれることが多かったので、読みやすそうな図書を選出いたしました。
なお、それぞれ簡単な紹介文を書いたので、興味をそそられた図書はぜひ読んでみてください。貸し出していなければわたしも一冊ずつ持っているはずので、聞いてください。また、今回副賞としてお渡しした方に聞いてみてください。おそらくどの本も大学の図書館にあると思います。なければ、リクエストしたらきっと取り寄せてくれると思いますよ!名著ばかりなので!
・Rey Chow. ”Not Like a Native Speaker: On Languaging as a Postcolonial Experience.“ Columbia University Press.
ポスト植民地学や映画批評でとても有名なデューク大学の台湾人女性の教授が書いた、翻訳など言語間を行き来するときに発生する権力関係に関する本です。英語でディベートをしていますよね。しかも英国議会での答弁を練習するためのゲームとして発生したスタイルで。そういう言語を介した様々な事象を新たな視点で批評できるようになる一冊です。ちょいむずかしめです。フェミニスト学のゼミとかで読むような本ですが、テーマがパーラディベートにぴったりな本だったので選ばせてもらいました。
・Malala Yousafzai. ”I Am Malala.” Little, Brown and Company.
みなさまご存知の2014 Nobel Peace Prize受賞者、マララ・ユサフサイ氏の自伝です。保守的な社会でどのようにしてマララ氏のようなヒーローが生まれたのか詳しく分かります。やっぱり親御さんのサポートや影響って強いんだなぁとか、でもマララ氏の弟くんじゃなくて、マララ氏がヒーローになったのは個性もあるんだなぁとか。マララ氏のことはなんとなくご存知の方は多いと思いますが、この本ではお父様のジアウディン氏についても知れますよ!
・ 姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』 文藝春秋
Contents warning: 性暴力事件に着想を得た小説です。
この小説は2016年に東大生5人が起こした集団性暴力事件に着想を得て、社会に批判された被害者の女子大生の視点から描かれています。スクールカースト、理系VS文系、男女のコンプレックス、偏差値至上主義などの様々な権力構造の中で主人公が翻弄され、様々な方向やステークホルダーから攻撃を受けてしまったことがあくまで、被害者を支援する視点で書かれています。
・Ashley Mardell. ”The ABC's of LGBT+” Mango.
・Feminism: A Very Short Introduction Oxford
・Sexuality: A Very Short Introduction Oxford
・American Women’s History: A Very Short Introduction Oxford
こちらはすべてとても読みやすくて簡潔な入門書です。中高生を想定して書かれているのでとてもわかり易いです。
・NHK「女性の貧困」取材班 『女性たちの貧困ー"新たな連鎖"の衝撃』幻冬舎
日本で働く単身女性の3人に一人が年収114万円未満であるということを、一人ひとりの貧困女性の生活の丁寧な取材と膨大なデータを通じて伝えてくれる一冊です。目を背けたくなるようなどうしようもできない貧困にシングルマザーとして、あるいは未成年女性として陥ってしまった女性達の現状を学ぶことができます。女性だからこそより貧困が辛くなる現象がどのようにしておきてしまっているのか、これを知っているといつかどこかのタイミングでより”正しい”判断や発言ができるかも知れませんね。
・遠藤まめた『オレは絶対にワタシじゃない』はるか書房
トランスジェンダー活動家の当事者による自伝を含んだ、ジェンダー入門書です。当事者でなくても、当事者であっても、うなずけるジェンダーに関連する問題に向き合わざるをえなかった遠藤氏の最新作です。遠藤氏には私も個人的にお会いしたことがありますが、とてもグラスルーツやLGBTの中でも最も弱い立場にあるとされる障害者や若者が困っている問題などを良く知っていて、日々活動されている方です。ツイッターもやっているので是非トランスジェンダーやLGBの最新も問題やニュースをしりたい方はフォローしてみてください。
・牧村 朝子『百合のリアル』星海社新書
牧村氏はレズビアンライフサポーターを名乗る、レズビアン当事者の漫画家・タレント・ライターです。noteでも定期的に届いた質問や悩み相談に答えるかたちで文章を投稿しており、自身のフランス人女性と結婚していたことについても漫画を書いています。彼女のとてもオープンで等身大なツイート、文章、漫画に惹かれてツイッターやnoteを読み始めました。この本も彼女の経験について知れるのかと思って買ってみたら、実際は性自認や性的指向についてどのようにアプローチするべきか、どうすればより多くの人がお互いにとって優しい社会にできるのか、というジェンダーセクシュアリティ入門的な著書でした!私が最近「ジェンダー/LGBT/セクシュアリティ関連でおすすめの本教えて!」と聞かれたら一番最初に紹介している本です。イラストも多く、また様々な登場人物がいるのでとても楽に読める本です。一通り勉強をしたことがある方も、一度読んでみると、全くジェンダーやセクシュアリティに関して知識がない人に説明するときにとても役に立つと思います!
・仁藤 夢乃『女子高生の裏社会「関係性の貧困」に生きる少女たち』光文社新書
・仁藤 夢乃『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』英治出版
上記の二作は一般社団法人Colabo(https://colabo-official.net/)という、家に帰れない、性的搾取に遭って逃げる場所がない、食べるものがない、親に暴力を振るわれている、などの悩みをもった女子小中高生を支援している団体の代表の方が自身の経験やコラボも活動を通じて出会った少女達のリアルを書き記した著書です。自分の過去や出会った少女達の人生に寄り添いながら、何が問題の根底にあるのか、どう支援ができるのか、社会のどういう人間達や思いが少女達を深く追い詰め傷つけてしまうのか。世代間を超えた貧困の再生産、虐待、通学困難、関係性の貧困、衣食住の欠如、知的障害、身体障害、精神疾患、望まない妊娠、性的・金銭的搾取しか頭にない夜の街の大人たち...様々なことが重なり合うインターセクション(交差点)に立たされている少女達の現状です。
・Chiamamanda Ngozi Adichie. “We Should All Be Feminists”
・bell hooks. “Feminism is for Everybody.”
著名な黒人女性フェミニスト学者による一般読者向けのフェミニズムに関する本です。アディーチ氏の著書はもともとTED Talkなので、是非TED talk版もご視聴ください。アディーチ氏の本の方が英語も簡単で、短く、読みやすいです。また、エマ・ワトソンの国連で発表したHeForSheスピーチにも少し内容や主張がかぶります。bell hooks氏の本はそうした男女を共に縛るジェンダーの圧力を、”white supremacist capitalist patriarchy”と読んでいます。全ての搾取的関係を正すまでは、フェミニズムのゴールは達成できないと主張しています。また、この著書を書いた当時はhooks氏は自身のセクシュアリティについてはカミングアウトしていませんでしたが、時間が立ってから再出版をしたさいに付け加えた序章では、自身がレズビアンであることも、抑圧や差別の一因となっていることについて言及し、white supremacist capitalist heterosexist cissexist patriarchyとしています。
・Judith Butler “Gender Trouble” (Routledge)
おそらく、今回の著書リストの中でも一番難解な著書です。とはいえ、一般読者も想定して書かれているので、この著書の主張であることの背景問題などについても触れています。もし興味のある方はぜひリーディングクラブを作って一緒に輪読会を開きましょう!オープンインビテーションなので、倉田までいつでもご連絡くださいな。
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個人的にも熟読させて頂きました(^^)
倉田さん、ありがとうございました!
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