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2019年9月19日木曜日
Kyushu Debate Openに際して③~加藤さんからの寄稿文~
連投失礼します。広報の岡田です
今回はKyushu Debate Open(QDO)のCo-Chief Adjudicator兼SDGs Officerを務められた加藤彰さんに記事をお願いしました。
ディベートという競技の社会的意義なども発見できる名文になっておりますのでぜひお楽しみください。
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こんにちは、Kyushu Debate Open 2019(以下QDO)のCo-Chief Adjudicator(共同審査委員長)兼SDGs Officerを務めさせて頂きました加藤彰と申します。
私は2009年に東京大学英語ディベート部(UTDS)に入部したのがディベートに携わる最初のきっかけでした。色々な方にご迷惑をおかけしながらも10年目に至るわけですが、そのおよそ半分もの期間にQDOに関与させて頂いていることになります。すでに素晴らしい記事が参加者及びTD(大会運営責任者)の方からある中で恐縮ですが、私からもお話しできればと思います。長くなってしまったので、最悪太字の部分だけお読みください。
1. 九州地域でディベートを盛り上げたいという"想い"に共感
QDOとの出会いは、2014年に「ディベートが盛んではないこの地域を盛り上げたい!」という九州大学の学生の方にお声がけ頂いたのが始まりでした。私は当時大学院2年生でした。
その時、過去に参加した濱口杯やHakata Ramen Cupでの思い出や、1年の梅子杯で知り合った九州地域の大学の人たちの顔がまず過ぎりました。それから、私は少し恥ずかしいのですが「理不尽さを0にしたい」という想いを持っており、ディベートをしたくても十分に楽しめない、という所謂「ディベート格差」の問題にも対応したいと思っていました。私は東京でディベートを6年間しており、自大学・他大学含め優秀で優しい先輩・同期・後輩に恵まれたためディベートの成長機会に恵まれていました。一方で、当時15大学位で地方も含めボランティアでレクチャーを通じ感じたのは「機会の不平等」でした。
この機会の不平等の観点は色々あり得ますが、「地域」というレンズで見てみると、私は東京の大会にどんなに長くても電車で1時間(また、朝に弱い私は会場の近くの友人の家に泊まらせてもらったので徒歩圏内だったことも)の環境であった一方、地方からはバイト等で貯めたお金で夜行バスやLCCを駆使して大会に来なくてはならない、さらにはその機会も限られる、ということが問題だと思いました。
何かしら九州に恩返しをしたい、さらには自分が問題視している理不尽さの解消にも寄与したいと思い、立ち上げメンバーとして参加させて頂きました。以降、(2015年を除く)毎年審査委員長としてお声がけ頂いておりますが、毎年変わらないのは九州地方のディベーターの「想い」でした。今や日本で最も歴史のある世界大会様式のディベート国際大会となり、アジア大会(UADC、ABP)や世界大会(WUDC)で活躍するディベーターが一堂に会する場に少しでも自分がお役に立てるのであれば、と思い今年も参加しました。特に今年は、去年副大会責任者(VTD)を務めていた姫野さんが2年連続で、かつ就職活動もある中大会責任者(TD)を務めるということで、返事2つでOKしました。
2. 「全員のディベーターが九州に来てよかった」と思えるようにしたい
2014年からのDNAとして根付いているのは、高い交通費・宿泊費、さらには参加費に見合うように、「九州に来てよかった」と思えるようにしたい、ということでした。
毎年、会議を重ね、「ディベート大会としての質」、および「イベントとしての質」両方をいかに高められるか、と議論しています。(もちろん、至らないところも多々ありご迷惑をおかけしているかもしれませんが…。)
前者は、可能な限り多くの国からのディベーター・ジャッジをお呼びできるように、マーケティング含めコミが一丸となって頑張らせていただいています。普段の国内では味わえない、見たことない議論への対応、自分のことを一切知らない人によるジャッジ等はワクワク感が大きい、という声も頂戴しました。
また、今年からよりディベートの「教育」や「成長」の観点を強化できないかとコミの皆さんと考えました。今年は大会前日の金曜日に世界大会の副審査委員長をはじめとした人たちによるディベートのパネルディスカッション、ワークショップ、大会翌日の月曜日にディベート研究者/実務者によるディベート学会も開催しました。(ディベートコーチはどう振舞うべきか、EFLのディベートコミュニティはどのように発展できるのか、等海外発表者を中心に面白い議論ばかりでした!)また、大会中という意味では、ラウンドの間にできるだけ"Demo Debate"という形で、世界トップクラスのPM、LOスピーチが聞けるというのは、私自身も勉強になっています!
後者の「イベントとしての質」は、まさに九州の学生が創意工夫を施してくれています。食事やブレイクナイトに日本らしさ、九州らしさを散りばめている結果が、今年のオープニングの太鼓の演奏、書道の経験等に繋がっているかと思います。また、九州の学生がすごいのは「去年よりさらに良くするには」という飽くなき探求心にあるかと思っており、私自身も楽しみにしています。
3. ジャッジやコーチ、教育関係者、ディベートを何かしら活かしたいという人にも九州に来てほしい
上記の話とも少し被るのですが、私は秘めた思いとしては、ディベーターとしてだけではなく、他の観点でもぜひ九州に来ていただきたい、と思っています。
一番分かりやすいのはジャッジだと思います。実は例年数名の方がIndependent Judgeとして大会に参加してくださっています。ブレイクは、毎年一緒にジャッジした人による総合評価によって決めさせていただいているのですが(よく誤解されるのですが、毎年全員自動ブレイクではありません…)今年は参加頂いた方は4人のジャッジからとても高評価でブレイクとなりました。あいにくブレイクに届かなかったとしても、とはいえ、国内外のディベーターが入り混じる難しい試合を、世界トップレベルのジャッジとディスカッションするのはすごく面白い、なかなか無い機会だと思っています。私も例年、ジャッジとして世界のジャッジの見方・説明の仕方、さらにはディスカッションの進め方にインスパイアされており、学ぶことがたくさんあるな、と思っています。言い方を変えると、レクチャーなどと違い、個別具体のラウンドで、緊張感のある中、自分のジャッジのクセやできていること、できていないところを「見える化」するいい機会だとも思っています。
また、前述したパネルディスカッションやワークショップ、学会は、ディベーター、ジャッジ以外の人も楽しめるように進化させたいという思いのもと、スタートしています。実は私はこっそりと九州大学の学術研究者というポジションを頂戴しており、「ディベート教育国際研究会」という学会の役員も務めております。毎年理論と実践の両輪で学ぶことが多々あります。「ディベートについてディベートする」、「ディベートを科学する」、「ディベートを教育とより掛け合わせる」などのキーワードにピンときたら、ぜひいらしてください。(ちなみに私は数年前に即興型ディベートでに身につく能力の研究を、最近はディベートとディスカッションの関係や、ディベート大会の運営に関して研究しています。)
4. ディベートをより社会にも広めたい…その一つのキーワードとしてのSDGs
別の角度からこの大会の特色を語ると、SDGs(Sustainable Development Goals)があるかと思います。外務省の説明を引用すると、「2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています」というものになります。私はこれを、「社会課題」に関するグローバルの共通言語だと捉えております。
QDOでは、「SDGs元年」と呼ばれた去年から、世界で初めてSDGsにコミットしたディベート大会となりました。具体的にはすべてのラウンドはSDGsに関連させ、マネジメントにもSDGsを活用しました。なぜSDGsにコミットしたか、という理由は幾つかありますが2つだけご紹介します。
1つは、「ディベートをラウンド部屋だけで終わらせるのはもったいない」、社会により広く広めたい、という想いがあります。例えば、アジアのトップディベーターで、最年少で内閣入りもしたSyed SaddiqのTEDの動画をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=FqCZX3WtlZc
私なりの解釈をすると、ディベートは「ドア・オープン力」だ身につく競技だと思っています。 ①インプットとしての様々な社会課題に関する知識、②プロセスとしてのスピーディーな思考力、③アウトプットとしての論理的・感情的な分りやすさを意識したプレゼンテーション力が身につくと思っています。(詳しくはhttps://note.mu/akirakato/n/n4eaa37770cd8)これの①に当てはめると、ディベーターがリサーチをする際に、SDGs、さらにはその背景にある社会課題の多くをリサーチする契機(あわよくば、その後のアドボカシー等に繋がる機会)になると嬉しいと思いました。
また、私はディベートがSDGs教育(広く言うと、ESD: Education for Sustainability Development)や研修ともとても親和的だと思っています。あえて誤解を招く表現でいうと、SDGsをフックにディベートに興味関心を抱いてくださる人が増えてくれることにも期待しています。事実今年は、ディベートを知らない人たちが大会の見学に来てくださり、さらにこれを強化したいと思いました。
2つ目の理由としては、SDGsというレンズで大会運営を見直すと、より多くのディベーターやその他のステークホルダーの理不尽さを減らすことにもつながるということもあります。例えば10番の目標の「人や国の不平等をなくす」に注目すると、ジェンダー、障害*の有無や言語の壁に関係なしに大会を楽しむためにはどうするか、と考えるキッカケになります。(例えば、Equity PolicyやOpt Out Policy等を早期から議論することにも繋がりました。)12番の目標の「持続可能な消費と生産のパターン」に注目すると、リサイクルの促進やフードロスの削減などのためにどうするか、と考える契機になります。より大会を持続可能にし、社会に貢献するためにはSDGsがぴったりだと思いました。
(*障がい、障碍などの表記もありますが、常用漢字を採択させていただきました。)
5. 「スクラム戦」の一員になってくれませんか?
例年そうなのですが、九州地域でこの国際大会を開くことは「スクラム戦」であると思っています。特に今年、最後の写真撮影をした際に、コミッティーの数に改めて驚かされました。
私は実はこっそりと運営のLINEに例年入らせていただいているのですが、約半年にわたって、ほぼ毎日LINEの通知が来ている状態でした。というのも、QDOの運営は色々な観点から難易度が高いというのがあります。例えば、巻き込むべきステークホルダーの数が多様であることが影響しています。国内のディベーターだけではなく、海外のディベーターとなると、ビザの支援や宗教などにも配慮した食事の準備等もより重要になりますし、例年QDOは九州大学に加え、外務省、文科省のような公的機関からの後援も頂戴しています。必然的に仕事の量は肥大化する傾向にあります。また、それを比較的運営の経験が少ない人たちで行うというのもチャレンジです。
思い返すと、立ち上げ期から多くの方にご協力いただいております。2014年から何年も、いわゆる学生及び社会人の「コミのプロフェッショナル」の方にご協力頂いています。そして何よりも九州のファンの皆様の「スクラム戦」である、につきます。例えば、もうQDOに携わるのが5、6回目だという人もたくさんいます。改めて御礼申し上げます。
ここでのお願いは、ぜひ皆様もこの「スクラム戦」の一員になってくれませんか、ということです。
別に大会の運営の一員として参画してほしい、ということではありません。(もちろん、それは大歓迎ですが!)九州地域の学生は、「どのようにすればディベートがより盛り上がるか」「QDOをよりよくするにはどうすればよいか」と日夜考えています。それに対する温かい支援であったり、アドバイスやご意見等、いつでも大歓迎です。また、ぜひ、QDO 2020、さらにはその先にもお越し頂ければと思います。
長くなってしまいました。ポイントとしては、QDOは九州地域でディベートを盛り上げたいという"想い"によって運営されています。ぜひ、皆様もQDOにいらしていただければ嬉しいですし、「スクラム戦」にご協力いただけることがあれば、狂喜乱舞します。
(なお、QDOに関するご意見はkyushu.debate.open.since2014@gmail.comまでどうぞ)
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QDOという大会にこれほどのこだわりが詰まっていることに驚きとともに感動を覚えますね。
AKさん、ありがとうございました!
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QDO2019にオブザーバーとして参加させていただいた河部(かわべ)です。あのときはいろいろと教えていただきありがとうごさいました。このレポートを読んでますます加藤さんの努力がQDOをこれだけ素晴らしい国際大会に成長させているのがよくわかりました。特にSDGsとディベート大会の連関は素晴らしいです。これほどSDGsの重要性を参加者全員が認識共有できる試みを他では見たことはありません。(様々なSDGsに関するセミナーやワークショップなどを見てきましたが) これからも頑張ってください。応援しています。
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