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2017年8月15日火曜日

JPDU練習会 レクチャラーによる寄稿文

JPDUブログをお読みの皆様こんにちは!慶應義塾大学3年の藤井葉子です。多くの同期のディベーターが今秋から留学に行くということで、とてもさみしい思いをしております( ;∀;)
さて今回は、JPDU練習会担当として報告をさせていただきます!7月上旬に、成蹊大学でJPDU練習会が行われました。午前中にはレクチャー、午後にBritish Parliamentary Style (BP style) のラウンドを行いました。レクチャーでは、ディベート、及びジャッジの仕方について学びました。ディベートレクチャーは、佐々木珠音さん(早稲田大学)と田村光さん(慶應義塾大学)のお二人、ジャッジレクチャーは倉内亮弥さんと溝上力さん(ともに東京大学院)のお二人にお願いしました。
ディベートレクチャー
そこで今回は、ディベートレクチャーと午後のラウンドのジャッジを務めました、田村光さんに文章をお願いしました!
 ジャッジレクチャー

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無意識に歯磨き粉を食べる妖怪こと田村です。
 5000兆円拾って毎日寿司食べたいって思ってたら唐突にたまねさんからレクチャー依頼されて1ヶ月ほど前に成蹊大学にお邪魔してBP入門レクチャーをして来ました。道中に5000兆円は落ちていなかったです。
 レクチャーした感想を書いてくれ、と依頼されたのですが、今まで引きうけたKDSのブログにおける大会出場記事執筆依頼等と違って「優勝して嬉しい!」とか「このラウンド悔しかった」とかあった訳でもない、「死ぬ程暑い中喋り通した」というイベントへの心象をどう表現しようか正直困りました。
 詳しく何を教えたか〜とか、変なBPのジャッジの仕方してる人が多いから直して欲しい〜とかここで書いてもしょうがないので、今回は「レクチャー/エジュケをどうするべきか?」に主眼をおいて筆を進めようと思います。


レクチャー当日の概要
内容について
今回のレクチャーで感じた難しさ
これからレクチャーをする上級生への提案
どうエジュケを行なっていくべきか



レクチャー当日の概要

 成蹊大学には何回か大会等でお邪魔したことがあるはずですが乗り換え2回ほどミスってレジ落ちギリギリで会場まで着きました。
 会場を覗いたらバチカン市国みたいな人口密度で、ブレイク制大会開ける程の人数の参加者でごった返していました。参加者層を見ると今まで聞いた事がない大学等からも沢山来てくださったり、社会人ひいては高校生の方も参加して下さったりと、JPDUという機関の存在意義が垣間見えました。
 今回初級レクチャーの参加者が概算して80人程で1教室の収容能力を大幅に超過したので、「一つの教室で私とたまねさんで分担してレクチャーを行う」という当初の予定を変更して「二つの教室で同時並行で同じ資料を用いてレクチャーをする」という方針となりました。
 レクチャー後はラウンドを2つジャッジしたりと、強いていうならAsianBridgeみたいなスケジュールの練習会でした。出た事ないから憶測です。




レクチャー内容について

 資料前半の「そもそもBPとは?&オープニング」についてはたまねさんが、後半の「クロージング」については私が作成しました。
 「NAとBPのオープニングの違い」「BPにおけるPOIの取り方使い方」「エクステンションの定義」「エクステンションスピーカーとウィップのロール」などBPに固有な事も沢山話しましたが、「1stって何やるの?」「プレパってどうやるの?」「プレパの仕方」などフォーマットに関わらないディベート一般の理論についても扱いました。



レクチャーで感じた難しさ

1 参加者の知識や経験が読めない
 今迄KDS内外の同期にGeminiやBP noviceに向けたレクチャーをしたり後輩にエジュケをしたりという機会はあったのですが、今回初めてJPDUでレクチャーを引き受けた際に「初対面の人に一体どこから教えればいいのだろう?」という疑問がまず頭に浮かびました。BPのラウンドをやった事があるかどうか、BPのラウンドを見た事があるかどうか、先輩からBPにどの程度教えられているか、ディベート自体の知識経験はどの程度あるか、など分からない事ばかりでした。
 特に所謂ディベート用語というものが何処まで通じるのかのも謎でしたので、個人的に言葉の定義や基礎の基礎まで一応準備して臨んだ結果、大いに役に立ちました。ただその結果かなり「BP特有」の話からずれた話までせざるを得なかったのが辛かったです。

2参加者の理解度が分からない
 今回話す内容に対して時間が大幅に足りずかなり一方的に話すといったレクチャーになってしまいました。勿論都度質問の時間を取ったりという事はしたのですが、質問も数個しか来なかったりと、interactiveとはあまり言えないレクチャーであったと言わざるを得ないです。その結果「本当に私に言っている事は伝わっているんだろうか」と常に不安でした。本来であれば講師が問題を出して参加者全員に考えて答えてもらったり、教えた内容を「例題」で応用する訓練をしたりというように参加者が能動的に考えてアウトプットする機会を設けて、随時理解度を確認した方が望ましいと思いました。




これからレクチャーをする上級生への提案

 色んな大学で合宿だったりと1年生へのエジュケが本格化してくる時期ですし、以上の事を踏まえてレクチャーないしワークショップをする際に気を付けるといいんじゃないか?と思う事を列挙してみました。

1 (可能な限り客観的な)一貫したディベート観をもってレクチャーをする
 「BPのWhipの役割」という小さい問いでも、「クロージングの役割」「BPのルール」「反論のやり方」「話のまとめ方」「BPの試合はどうジャッジされるのか」「フレーミングの仕方」などの大量の事柄が前提となっています。また「反論のやり方」という問いにも「反論の定義」「反論の種類」「反論の構成」「反論の優先順位」など更に細分化されます。
 つまりある事柄についてレクチャーする為にはその事柄以下全ての問いについて答えられなければいけないでしょう。レクチャーは往々にして理論的/抽象的な所から始める事が多いので基礎の基礎について説明できないとあやふやになってしまいます。
 去年夏セミでJaysonというフィリピンの凄いディベーターのレクチャーを受けたのですが、ディベートとは何か?というディベート観及ぶ用語の確認など基礎の基礎から教えてもらいとても分かりやすかったのを記憶してます。
 特に言葉の定義についてはいつでも答えられるようにしておかなければいけません。色々な人とディベートの技術だったりについて話を伺っている際に思った事は、「皆言葉を曖昧に使っている」という事です。「スタンス」「principle」といった言葉を一体どれ程の人が定義して使っているのでしょうか?上級生同士であれば「なんとなく」言葉のニュアンスは分かるかも知れないですが、1年生には通用しません。定義について曖昧なままレクチャーで触れなければ、またその後輩が翌年同様のレクチャーをして定義の不在を再生産する事になります。


2 時間、参加者に応じてレクチャーのやり方を変える。
 以前他大の友人2人にエジュケした時に実感したのですが、多分ベストなエジュケの仕方は「見知った少数人相手に長時間教える事」だと思うのでその理想に近付けるように工夫をすべきだと思います。
 例えば合宿で1年生30人くらいを対象に5人の先輩が1回あたり1時間レクチャーするとします。この時「30人全員が同時に1人の先輩のレクチャーを聴く」のではなく、「5人の先輩が6人ずつ1年生にレクチャーしてローテーションしていく」という風にすると少人数制ワークショップが開けます。また、もしレクチャーで言う事が多過ぎるのであれば「事前に資料を配布して読んでおいてもらう/参考資料として音源を聴いておいてもらう」等の対策も取れます。
 上級生になっていきなりレクチャーやエジュケを任せられると「兎に角教えなきゃ!」と半ばパニックになる人がいますが、そうすると往々に「教える事」が自己目的化して分かりやすさ等が度外視になりがちです。参加者視点でそのレクチャーの吸収効率について常に考えてレクチャーの形式や内容を考えるべきなので、過去に自分が受けたレクチャーのやり方を参考に修正していくといいかなと思います。


3 色々な資料を参考にする
 当然ですが、あなたはディベートレクチャーを行う最初の人類ではありません。JPDUのサイト、個人のブログやFBポスト、各大学のBlog、YouTubeのレクチャー動画など、大量に先人が残した資料があります。レクチャーをする、となったら取り敢えず他の人がどんなレクチャーをしているか参考にしてみては如何でしょうか?大学によってはリソースが蓄積されて継承されているでしょうし、先輩にレクチャーについて相談してもいいかもしれません。是非レクチャー終わった後は後輩に残したり公開したりして他のレクチャラーのレファレンスとして残してあげましょう。





どうエジュケを行なっていくべきか

 結局の所1番大切な事は「各人の自己学習」です。全ての事柄にレクチャーがある訳ではありません。毎日レクチャー出来る人がいるとは限りません。当然色々なレクチャーを資料として残して共有する事が良い事である事は明白です。しかし幾らレクチャーを聞いたとしても、結局の所は自力で色んな資料を探して、本を読んで、音源を聴いてそして自分で考えて、という事を徹底できる人の方が強くなるのだと思います。
 つまりレクチャーするだけでなく、ディベートに対してどう向き合っていくか、どうやったら上手くなれるのか、という方法論を最初の方に教える必要性があるという事です。それは練習の仕方及び活用の仕方であったり、英語力向上の仕方であったり、音源の活用であったり、オンラインリソースのURLをリストアップして渡してあげるだったり、所謂「飢えている人に釣りの方法を教える」という事で、「持続可能」な教育効果を齎す事が本当にエジュケで必要な事なんだと思います。正直たかが1、2回のレクチャーで人は大して変わりません。残念ながらきっと私が今回の参加者に将来また何か教える機会というのはあまりなく、一期一会的レクチャーだった訳で、あの1時間という時間の中で私は彼ら彼女らのディベート人生にどれほどの影響を与えられたのか甚だ疑問です。
 最近高校生ディベーターに対するエジュケの方法について考える際にも同様の事をよく思います。高校生は立地や教育者、情報などの面で、特に日本において、平均的大学生に比べるとディスアドバンテージが大きいです。
 例えば母校のディベート部に直接頻繁に教えに行くのは非現実的ですし、大きな大会前や大型連休の帰省に乗じて訪問する程度しか現状のところ出来ていません。
 高校にしろ大学にしろ、環境が整っていないならば環境を整えるのも大切ですが、環境が整っていない状況下でどう自力で強くなっていくか?という手段を並行して教える事こそエジュケなのかなあと思いました。


 考えが纏まってない事が顕著な文章で恐縮ですがこれらが今回のレクチャーの感想となります。参加者の皆さん、練習会コミの皆さんありがとうございました。
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ありがとうございました!ディベートの技術そのものだけでなく、エデュケーションの仕方という観点からの貴重な寄稿文だったかと思います!

また、JPDU練習会では月一回程度を目安に練習会を開催しております。ラウンド練だけでなくレクチャーの企画も積極的に設けていきたいと思っておりますので、みなさんぜひ奮ってご参加ください!他大のディベーターと練習する貴重な機会かと思います!

練習会メンバー

最後になりましたが、忙しい合間を縫ってレクチャーを準備、開催してくださったレクチャラーの皆様、本当にありがとうございました!

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