2020年5月8日金曜日

JPDU spring tournament 2020 中止に際して ~TD香川さんからの寄稿文~

澄み渡る青空の向こうにはまだ雪化粧をした富士山を臨むことができますが、外出ができない今ではベランダから臨むその姿もいくぶん悲しげに見えてしまいます。みなさまいかがお過ごしでしょうか。広報の中村です。

今回は、コロナウィルスの影響で開催を断念せざるを得なかったJPDU spring tournament 2020(通称春T)について、TDの香川さんに今回の決定の背景などを書いていただきました。これまで数多くのコミ経験がある香川さんならではの視座もあり、必見です。

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 こんにちは。ほんのちょっとの間でしたが春TのTDをしていました、青山学院大学4年の香川沙也です。最近はふわっふわのティラミスになることを夢見ています。

 「大会中止になっちゃったし、ブログ寄稿回避できるのでは?!」と淡い期待を抱いていたのですが、普通に執筆をお願いされてしまったので頑張って思い出しながら書きます。


 今年の春Tはコロナウイルスの影響により開催を中止しました。ご参加を心待ちにしていただいていた皆様には心よりお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。(地より深い土下座)
 このブログでは、中止の決定に到るまでの様子オンライン化を懸念した理由の詳細などについて、「JPDUTとして」という視点から皆様に共有させていただければと思います。(あと適当に思ったことも書きます。)

  1. TD就任経緯
  2. オフライン開催中止判断について
  3. なぜ春Tをオンライン大会化させなかったのか
  4. 感想など

  1. TD就任経緯
 3月5日、現JPDU副代表から「春TのTDどうしよう...」と連絡がきました。去年私はJPDU副代表を務めていたのですが、その際に「春TのTDは早めに決めよう!就任したばかりの次期JPDU幹部に投げてしまうと、突然指名されたTDは『会場抑えとNationals運営よろしく!(尚準備期間ほぼ無し)』みたいな鬼ヤバ展開が容易に想像できて地獄!」的なことを言ってました。ですが、結局この手でなあなあにしてしまったため、罪悪感からTDを引き受けることにしました。

 就任後、開催日まで2ヶ月を切っていたのでその日のうちに会場とタブ探しを始めました。関東の現役生を中心にタブ経験者のリクルートをしていたのですが、Nationalsなのもあり、選手として出たい人ばかりで振られっぱなしでした。某タブマスターが卒業された今「タブいない問題」がかなり深刻化していたので、東映杯に引き続きコミ公募制度を導入して「新規コミ人材の育成をしよう!」と春Tの裏テーマを決めました。JPDU代表を始めとするたくさんの人たちのお力添えもあって、良い感じに若めのコミ編成ができました。応募してくださったみなさん本当にありがとうございました。

  1. オフライン開催中止判断について
 アカデミー運営を悩ませたで賞2020の最優秀賞は、突然暴走してしまったtabbrでもなければ、モンスター参加者でもなく、コロナウイルスです。
 当初の予定では会場として予定していた成蹊大学の使用可否連絡によって、大会の延期を検討していました。しかしコミACで会議を重ねた結果、以下の懸念事項によりオフライン開催は一切中止の判断を下しました。

→「5、6月に延期説」
 ・この時期にコロナウイルスが完全に収束していることは非現実的であり、そもそも会場が見つかる保証もないので安易に延期宣言をして運営を進めるべきではない。延期しまくると、運営はその度にアプリケのやり直しを、参加者はいつになるかもわからない大会に向けて同じチームでずっと練習しなければならない、などという状況が続く恐れあり。
 ・参加することが構造的に難しい学生がそれなりの数いることが予想でき、参加者数が減ってしまった場合、本来の大会の意義を失ってしまう可能性がある。(所属大学から課外活動の中止要請が出ている団体や、医学部生など所属学部の事情がある学生、家族に医療従事者や実際に感染者がいるといった家庭の事情がある学生など。)

→「いっそのこと夏まで延期説」
 ・例年春Tは新入生へのエジュケ(若葉杯など)を行う時期よりも前に開催されているが、夏に開催するとなると新入生へのエジュケで忙しく、Asian大会へ出場する余裕がない可能性がある。
 ・後ろに控える大会への影響やBPとの兼ね合いからも春Tとしてオフライン開催をすることによる、ある程度の弊害は避けられないと予測できる。

 とまあツッコミ所がありそうなことを色々書きましたが...結局の所、一番の理由はコロナで場所が借りられなさそうなのでオフラインはやめにしようということです。参加者をこれ以上振り回すわけにもいかなかったので、オフラインについては割と早い段階で意見がまとまりました。

  1. なぜ春Tをオンライン大会化させなかったのか
 (注意:日本語を読んでもらえばわかると思いますが、オンライン大会を批判しているわけではありません。2020年4月上旬時点でJPDUTをオンライン化する際の懸念点を述べているだけということをご留意ください。私はオンライン画期的で素晴らしいと思います!!!(大声で叫びながら))

 オフラインで開催をしないとなると、次はオンライン化ついて議論しなければなりませんでした。
結論:春Tをオンライン化すると、
①JPDUTとしての大会提供価値が保証できない。②JPDUTとしてアクセス性を担保できない。③コミの負担がやばそう。
→なので、日本のオンライン大会化はいきなりJPDUTとして行うのではなく、とりあえず有志開催の大会から徐々に運営ノウハウを蓄積して、参加者にも慣れていってもらおう!!です。

1つずつ説明していきます。(なんかRFDみたいで恥ずかしいですね。笑)

 ①JPDUTとしての大会提供価値について
 国内外における大会でACやIAを選定する際に用いられるNationalsの大会実績はある程度信頼できる指標であるべきだと考えます。オンライン大会の運営ノウハウがまだ十分とは言えない状況で開催した場合、トラブルが発生してしまうことは避けられません。そんな状態でNationalsとして大会を開催することは極めて危険であると判断しました。
 (JUDCでは驚異の腕力で4R/1日回せていましたが、)予期せぬ遅延によって予選で3Rしか回せなかった場合、一騎打ちのAsian Styleではブレイクにおける運要素が多少強まってしまう恐れがあります。また、翌日に予選をずらしたとしても、ブレイクラウンドの数を減らさなければならないことや、(オンラインじゃないので一概にそうとは言えませんが)普段の大会でも2日目にブレイクチームが出席しないなどのことからも実績保証という観点において、提供できる大会の価値が例年と比べて低下してしまうと考えました。(ブレイク制を廃止し、チームプライズ制にした場合も同様です。)

 ②アクセシビリティについて
 JPDUTはJPDUに加盟する団体に可能な限りフェアである必要があると考えます。オンライン大会として開催した場合、安定したwifi環境やラウンドに取り組める静かな場所などのフェアネスや参加者のアクセシビリティが担保できない可能性があります。
 もちろん、通常のオフライン大会であっても、遠隔地の参加者は参加出来る・出来ないの格差は存在します。しかし、春・秋のどちらかは西日本開催にしていることや、(お気持ち程度ではありますが)遠方補助などで少なからず格差是正に努めようとはしています。その一方で、オンライン大会で在宅ワークをしている家族が居る実家暮らしの参加者や安定した通信環境が整っていない人たちについては、残念ながらコミから何もしてあげることはできません。これらが原因で参加機会の格差をJPDUとして生み出してしまうことは望ましいことではないと判断しました。

 ③コミの負担について
 前例が少ないとは言え、香川もコミ修行をそれなりに積んできたので腕力でオンライン大会をぶん回すことは物理的に可能です。ですが、「『気合いで回せる=大会を開催するべき』って考え方、大丈夫...?」と不安に感じました。
 オンライン化するとなれば、
 ・役職やそれぞれの仕事内容(特にTCやMDなど)も当初の予定と大きく変わってくる
 ・当日のトラブルを避けるためには、練習大会を複数回開く必要があり、その分の労力も人件費として当然考慮する必要がある
 ・Tabのジャロケを遠隔で行う難易度がちょっと高そう
 ・tabby catを使う約束だったのにvetoの関係で、タブチームは1から触ったことのないtabbrを扱う必要がある
 ・遅延時のルール決め、徹底が大変(xx分通信が途切れたら負けにするなど)
などのコミ的懸念事項が予想できます。
 コミの過剰な負担が叫ばれる中、果たしてこれらの負担は「負うべき負担である」と言い切れるのでしょうか。ましてや、春Tのコミはコミ経験の浅い人たちが多く、元々オフライン開催を前提に編成されているため、彼らにオンライン大会として運営することに同意するフェーズはどこにもありませんでした。オンライン化する場合には、運営を自由に辞退できるよう努めるつもりではいましたが、残念ながら実際に簡単にコミを抜けられるような雰囲気ではないように感じました。(本当にごめんなさい。私がもっとアットホームな雰囲気作りが出来ていればよかったのですが。。( ; _ ; ))
 このように、理論上の開催は可能ですが、4月上旬時点でのオンライン大会の運営についてはまだまだ未知数であったため、コミの負担を考慮すると積極的に開催を検討することはできませんでした。

 こんな感じで、「これが東映杯みたいな有志大会ならオンライン化したけど、JPDUTは厳しそうだなあ。開催したいけど、非常にとてもすごくマジで超絶めっちゃ怖いなあ。」と思ったので中止にしました。
 (春TCAの受け売りですが)オンライン化は、非JPDUの大会から徐々に日本ディベート界が慣れていくことができれば、それが一番理想的な形かなと思います。JUDCの運営のみなさまお疲れ様でした&ありがとうございます。

  1. 感想など
 ぎゅ!ってまとめると「めちゃ悔し〜春T開きたかったなあ。コロナぜつゆる(´・ω・`)」です。
 コミACのみなさんがそれぞれ進めてくださっていたお仕事はもちろん、TDとしては、遠征勢をコミACにこんな入れちゃっていいの?参加費的に大丈夫?の判断をしたこと、CA/DCA承認リストを色んな人に相談しながら作成したことなどなどなど。「あ〜〜あGHQで獄激辛ペヤング食べて誰かを巻き添えにしようと思ってたのにな〜〜。」と楽しみも含めた全部が水の泡になっちゃって残念な気持ちです。

 わたし1人の最終判断で、国内で最も権威のある大会の1つである春Tが無くなってしまうということのプレッシャーに1ヶ月間毎日フルボッコにされ続けていました。あんなにコミ修行を積んできたのに1人では何も決められない自分の無力さに絶望さえしました。中止後、SNS上で中止を残念に思う人たちをたくさん見て、しばらく自分を責めずにはいられませんでした。
 何度でも言いますが、個人的には大会運営は楽しくて仕方ないので開催したかったです。とてもとても。本当にとても。ですが、トラブル処理などが未知数であったオンライン大会において、まだ経験も浅かったコミが負うであろう負担について考えると中止にして良かったと思います。中止の最終判断をしたのは私なので香川のことは嫌いになっても春Tコミのことは嫌いにならないでください。(前田敦子)

 最後になりましたが、コミACのみなさま、大会運営に関してご相談に乗ってくださった方々、本当にありがとうございました。こんなにもちっぽけで頼りないTDで申し訳なかったです。みなさんがいなければ香川はぺちゃんこでぺらぺらになっていたと思うので感謝しきれません。

 さすがに腕が疲れてきたのでこの辺りで終わりたいと思います。(運動不足)
 大会・セミナー運営は最高に楽しいのでみなさんぜひ挑戦してみてください。わからないことがあれば香川は何でも助けます⁽⁽◝( ˙ ꒳ ˙ )◜⁾⁾ 
 ここまで読んでくださった方々はありがとうございます。疲れたと思うので美味しい紅茶でも飲んでくださいませ。拙い文章でほんとごめんなさいでした。。。


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ありがとうございました。いつかまたみなさんで顔を突き合わせてディベートできる日が来ることを祈念して、失礼いたします。

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