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2020年4月30日木曜日

2020年度JPDU代表挨拶

こんにちは!今年度JPDUの広報担当となりました、一橋大学(Hit-U)2年の中村友哉と申します。今年度はKDSの村田律さん、東京理科大の岩田和子さん、近畿大学の廣田佳紀さんの4人体制で担当いたします。よろしくお願いいたします。

さて、今回は今年度JPDUの代表に就任されました有田瑞生さんに今年度のJPDUについての抱負・意気込みを書いていただきました。JPDUのあり方についても多く述べられているので、すべてのディベーター関係者にとって必見の内容です。

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ディベート界の皆様こんにちは。今回、2020年度JPDU代表に就任する運びとなりました、東京大学4年の有田瑞生(ありた みづき)と申します。
COVID-19が猛威をふるい、皆様の生活に大きな影響を及ぼしているだろうと存じますが、皆様がつつがなく日常生活をお送りできることを深くお祈りいたします。

今回は、就任に際し代表挨拶を書く機会をいただきましたので、少し(正しくはだいぶ)長くなりますが、私がJPDUの代表としてどのようなビジョンをもって動こうとしているかについて皆様に共有させていただければ幸いです。
また、私が今から書き記す内容をもとに、皆様が様々な意見をもち、これからのディベート界の発展のために白熱した議論を行ってくださるととても嬉しいです。

1. 代表就任に際して
まず初めに、私の代表に対する抱負を記したいと思います。この3年間、私はディベート界においてフリーライダーでした。大会運営やJPDUには積極的に関わらず、ディベートという競技をただ楽しんでいたように思います。ところが、昨年度縁あって梅子杯のACをした際、大会のコミが抱える大きな負担や、所謂中小インステが存続するための苦労などを肌で感じたとき、日本ディベート界は転換期に立ち、多くの問題を抱えているのだと気がつきました。
私は、とても恵まれた環境でディベートをしてきた人間です。UTDSという団体の中で、素晴らしい同期や後輩、先輩に囲まれ、 ディベートだけにとどまらず、多様な場面でお世話になっています。そんな居場所や、そこにいる人たちが大好きであり、私や彼らが大切に思っているディベート界の存続と発展に何かしらの形で関われたら、という思いと同時に、多くのものをディベート界から享受してきたからこそ、ディベート界に貢献する責任があるという気持ちから、代表に立候補しました。
ディベート界の現状や、皆様がどのような思いを抱えているのか、代表としてJPDUをどのように動かすべきなのかについて、お恥ずかしながら私はまだまだ無知であると思います。JPDUの役員をはじめとして、ディベート界に関わる多くの方々からのご支援や助言を得ながらこの役割を1年間全うし、次の世代へ繋いでいこうと思います。改めまして、これから1年間よろしくおねがいいたします。

2. 以降の話についての注意事項
これから、JPDUの代表として、私がどういったビジョンや目標、計画をもって【現時点で】動こうとしているかについて皆様に共有させていただきたく存じます。
ですが、これらの情報はあくまで構想段階(一部、すでに進めているものもありますが)であり、この通りにJPDUが進むことを断言するものでは決してありません。このブログを通して、皆様からの反応や意見を受けてさらに考えを深め、議会の承認を得ながら実行していきたいと思います。

3. JPDUは誰のためにあり、どういった目的のために活動するのかについて
私がJPDUにおける業務を始めて2ヶ月となりますが、JPDUの抱える2つの大きな問題は、「JPDUはどういった目的のために存在するのかが明確でないことから、JPDUとして行うべき業務とそうでない業務の精査ができず、大量の業務をギリギリの状態で遂行する限界状況に達していること」と、「JPDUは重要な業務を多数行っているにも関わらず、外部からはそれが不透明であり、JPDUの抱える責任や仕事量に見合わない権威やペイバックしか与えられない結果、JPDUは一部の人間のやりがい搾取という極めて不安定な状況を迎えていること」です。後者の解決法については 具体的施策に落ちるので、後に個別具体的に回答いたしますが、前者については、日本ディベート界が転換期を迎える中で、JPDUの意義を改めて問い直す必要があると思います。
JPDUは、その目的によっては、大会運営や練習会などをそもそもしなくても良いのだと思います。例えば、JPDUを小さな政府のように、基本的には全て各インステに任せ、JPDUは利害調整だけする機関にするのであれば、上記の役割は必要ないですよね。一方で、JPDUを大きな政府のように捉え、ディベート界の成長に大きく貢献することが望まれるのであれば、それだけJPDUには大きな権限が与えられないと、組織の目的を達成することはできません。
このように、JPDUの存在意義を問うことは、JPDUの各業務を見直し、JPDUが役割を全うするために必要な権限と、それを確保するために皆さんが行わなくてはならない義務を明確にします。

このオープンクエスチョンはJPDUの指針となるものですから、当然、私一人で決めるべきものではなく、議会でこれから議論を重ねるつもりです。ですが、現時点で私が思うJPDUの存在意義については以下の通りです。

○前提
JPDUは基本的に学生ディベーターのために存在する。
JPDUは各インステが加盟し、インステからの協力や人材提供をもって成立しています。現状、JPDUの運営は一部例外を除いて学生でのみ担われていることから、学生ディベーターが最も優先されるターゲットだと認識します。

・「学生のため」とは?
①競争し、切磋琢磨できるだけの十分なディベーター人口を確保すること
ディベートの隆盛は音楽などと異なり、それに関わる人の多さに大きく影響されます。人材が多くなれば、それだけ大会の規模も大きくなり、ディベートにまつわる様々なイベントを行うことが可能になります。ですが、現状学生ディベーターは減少傾向にあるため、その解決が喫緊の課題です。

JPDUや大会運営の負担が一部の学生にだけよらないようにすること
ディベートをすることのメリットに対してコストが上回ったり、一握りの人間がディベート界の存続を担っている状況で彼らがいなくなるような不安定な状況は、ディベート人口を減らしたり、ディベートから享受できるものを目減りさせます。だからこそ、ディベート界存続のコストがより多くの人に担われることが肝要です。日本の年金制度みたいなものですね。

③彼らが楽しく【競争できる】環境を整えること
競技人口がいても、適正なルールがなかったり、十分なエジュケを通して自身が強くなれているという実感などがなければ、皆様が楽しくディベートをすることは難しいと考えますし、楽しくディベートをできなければ、人口は減少するばかりだと思います。さらに、英語ディベートは競技である以上、他者と競い、自身がより強くなるために切磋琢磨することがその本質的な活動だと思います。
これらを実現するためには、そのための環境づくりが必要です。ただし、この思想は英語ディベートを競争以上にただ楽しみたいという一部の需要を無視するものではありません。

→上記の前提から、私はJPDUの存在意義を、
「学生ディベーターの人口を確保し、ある程度競争的で、健康的かつ安定した競技環境を維持・促進する」
というものに据えようと思っています。何度も断っておきますが、これはあくまで構想です。もちろん、私は代表としてこのような思想をベースに任務を全うし、JPDUの組織づくりを行いますが、JPDU議会でよく話し合い、今後の活動方針を決定したいと思います。

4.JPDUとして行いたいこと
3.の冒頭で説明した問題意識と、JPDUの活動方針()を踏まえて、現状実行したいこと(もしくはJPDUとしてもちたい権限)は以下となります。

(1) JPDUの組織改革
JPDUは、前述の通り一部の人間のやりがい・慈善の心の搾取状態が続いており、また、業務が非常に煩雑で、効率の悪い状態となっています。これらを解決するために、以下のことを実行したい(すでにしている)と考えています。

①各役職の業務内容の精査・立て直し
役職によっては業務の内容が不透明だったり、必要以上に業務が多い状態が恒常化しています。この部分については、既に各部門の担当者と議論しあい、業務内容の確認や切り捨て等を現在行なっています。協力してくださっている役員の方々には頭が上がりません
また、こういった状態が発生した最大の原因は、役職の引継に様々な困難が伴っていることにあるので、今年度はマニュアル化等をしっかり行い、来年度の役員の負担が減るように調整いたします。

JPDU大会数を減らす
今の日本ディベート界では、インステや各個人が様々なコンセプトで大会を開催しており、JPDUとして大会を開催することの意義が小さくなっています。その一方で、JPDUでは多くの大会・セミナーの運営を抱え、他の業務と並行して行うことが、非常に大きな負担となっています。そこで、JPDUの方針と鑑みて、JPDU自身が開催する意義の小さいだろう大会について、その運営の中止、もしくは他のインステ等に引き継ぎたいと考えています。
具体的には、学生大会である春T、秋Tや、国際大会である冬Tは残しますが、BP noviceや梅子、さらにgemini cupの開催について見直しを行いたいと思います。

JPDUとしてスポンサーの獲得
これは去年も試みられています。JPDUとして財源を得ることで、後に言及しますピースコ制度や役員報酬、ディベート界の発展に関わるプロジェクト等に充てたいと考えます。

JPDU役員報酬について
JPDU役員は、役職や各人の意思によって変化するものの、多くの重要な業務を担っています。ですが、彼らの活動は全て慈善事業であり、責任に対するペイバックが存在しません。一部の人間の慈善の心ややりがいを搾取することで成立する組織は、当該個人の負担を大きくし、また、彼らに本当の意味で責任を課すことができないという点で非常に不安定です。大会のコミやACに対してもfeeが払われる以上、ディベート界のために活動する役員に報酬を与え、その努力を労わることは当然するべきことだと思います。
ただし、役員の働きをどう評価し、どれ程の金額を支払うのか、そのための財源を得られるのかについてまだまだ不確実な部分が多いため、これらの問題を解決することが先決です。

(2)ディベート界の改革
先ほど掲げたJPDUとしての目標に沿って、以下のことを行いたいと考えています。

・競技人口増加のための施策
Equity policyの刷新
競技人口を増加させるために、健康的な競技環境を創ることが必要不可欠です。昨年度に引き続き、equity policyを刷新するとともに、来年度からJPDUに常設のequity officerを置き、equity policyの浸透をより促進できるような組織体制を敷きたいと思います。

②ピースコ制度の確立
こちらも昨年度に引き続き、中小インステを対象としたエジュケ支援を行うシステム作りを行います。代表挨拶に先立ち、各地方のインステの要望を個人的に聞き回りましたが、ほとんどのインステで、教育リソースの不足が挙げられていました。今年度中にピースコ制度を確立し、競技人口の維持・増加に努めます。ピースコ制度が開始されるまでの期間については、既に各インステに代替案を提示しています。その際には関西ディベートコミュニティの協力を仰ぎ、快く引き受けてくださいました。改めて感謝の意をお伝えしたいと思います。

③大会運営の負担集中軽減
大会運営が一部の人間に集中しているという問題は、今のディベート界でもホットな話題だと思います。この問題については、
a. JPDU大会における正規コミ公募制の復活
ここ2年ほど、大会の正規コミはTDが個人的に指名する慣習が続いていました。ですが、春Tやその他の大会で公募制でもコミが集まり、かつ、多様な人からの応募が見込めることがわかったため、今後JPDUの大会の正規コミは基本的に公募制を採用いたします。JPDU以外の大会でもぜひ参考にしていただけたら幸いです。
b. Tの正規コミの半分を社会人にする
TJPDUが開催する大会の中で、社会人ディベーターが唯一ディベーターとして参加できる大会です。ですが、多くの社会人のディベーターが実際に参加し、かつブレイクラウンドのほとんどを占めているにも関わらず、運営の負担はほとんど全て学生が背負っています。学生ディベーターを基本的なスコープに据えるJPDUとして、このような状態は理念に反すると考えます。
そのため、増加する社会人ディベーターにもより大会運営をしていただくような文化を推進するためにも、冬Tの正規コミの半数以上は社会人の方に担っていただけるよう調整するつもりです。

④練習会におけるより良いジャッジ集め
練習会部門は毎年、ジャッジ集めに非常に苦労します。良いジャッジがいることは、練習会の効用を高め、ディベーターの能力向上に寄与する点において重要な要素です。現在の練習会担当は良いジャッジを集めるために奔走してくださっていて、これまた頭が上がりませんが、特に社会人の皆様には、今まで多くの恩恵をディベート界から受け、また、素晴らしいエジュケができるほどの能力と経験があることから、ぜひ積極的に参加し、後輩の育成に協力してくださることを希望いたしますし、皆様が参加しやすい・したくなるような練習会を作っていこうと考えています。

・競争促進のための国際化
JPDU規約等の英語翻訳
日本英語ディベート界では、留学生の数が増加し、また、国際大会参加を通じた国際交流も盛んになっています。それに際し、JPDU規約やJPDU equity policyが現状日本語版しか存在しないことは、例えば留学生の方がコミやACをなさったり、外国からのディベーターが日本でディベートをする際、これらの規約を参照することに大きなコストがかかり、accessibility等の観点から不適切であると考えます。現在、何名かのディベーターの協力を経て翻訳作業を行い、全ての規約について英語版も作成しております。

②国際大会参加促進事業(と競争の促進)
日本から海外大会に参加する時の最大の障壁は費用です。この費用について、JPDUから個人に援助を与えることは正当性を確保しにくい一方で、海外大会に積極的に参加し、ディベート能力の向上と、日本においてその知見を広めてもらうことはJPDUの目的の範疇にあります。
そこで、春Tや秋Tで優秀な成績を納めるディベーターに対して、海外大会出場のための費用を一部援助し、その援助を受ける際には練習会でのレクチャー等を引き受けてもらうなど、国内の競争を高める一方で海外大会出場を促すような事業が行えないかを模索しています。もちろんこの構想についても、財源の確保等が喫緊の課題となるため、今年度中に実現できるかは不明確ですが、ディベートを頑張っている学生を支援し、ディベート界の優秀な人材を育成することは、JPDUの理念にかなうものと理解します。

以上が今私の中にあるJPDUの活動ビジョンとなります。
上記の内容についてのご意見や助言、お叱りの言葉等は、4/30現在時点でJPDUとして募集している意見箱、もしくは私のmessenger等に送っていただけると幸いです。

また、これは個人的なお願いなのですが、JPDU役員の方々に対して、常に感謝の気持ちを持ち、それを伝えていただけると幸いです。多くのJPDU役員が、組織が不安定な中、多くの労力を割いてディベート界のために活動してくれています。私たちのディベート活動は、こういった人たちに支えられることで成立しているのだということを、どうか忘れないでください。

最後となりましたが、改めまして、1年間よろしくお願いいたします。皆様のサポートを得ながら、できうる限りで日本ディベート界に貢献していこうと思います。

2020/4/29
2020年度JPDU代表 有田瑞生

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ありがとうございました!今年度もJPDUもよろしくお願いいたします!